カセットテープが止まるまで-1989年の夏休み、自転車で海を目指した私たちの青春-
1989年、元号が平成へと変わった最初の夏。
世界が大きなうねりの中にあったあの頃、私たちはただ目の前の熱気に突き動かされていた。
高校一年生のナツミとサキ。
二人が思い立ったのは、30キロ先にある海へ自転車で向かうという無謀な旅だった。
相棒は、前カゴに鎮座したダブルラジカセと、お気に入りの曲を詰め込んだ自作のベスト・セレクション。
森高千里、渡辺美里、大江千里…スピーカーから溢れるビートが、照りつける日差しと汗ばむ肌に溶け込んでいく。
道端の自販機で買った瓶のコーラ、公衆電話からかけた小さな嘘、そして「大人になっても一緒にいよう」という無邪気な約束。
不便だけれど、未来がどこまでも明るく見えたあの時代。
重いペダルを漕ぎ続けた先に広がっていた黄金色の海は、宙ぶらりんな二人の「無敵さ」を祝福しているようだった。
これはスマホもSNSもなかった時代に、音楽と友情だけを頼りに駆け抜けた、ある夏の日の忘れられない記録。
便利さと引き換えに私たちが置いてきた、ヒリヒリするほど純粋でエモい青春の記憶が、カセットテープの回転とともに鮮やかに蘇る。
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高校一年生のナツミとサキ。
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