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第四章
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しおりを挟む平民になる。
この言葉がどれほど重く大変なことか。
令嬢として過ごしてきた人間が、平民の世界でやっていけるなんて到底思えない。
それでもジュゼッペ様の意志は強かった。
その後、何を言っても意志は変わらないと察したので後味はだいぶ悪いが、お茶会を終わりにした。
今は部屋に戻りただぼーっとしている。
することが無いというのもそうなのだが、ジュゼッペ様があまりにも見当違いすぎて驚ぎてもう何を考えれば良いかわからない。
「平民…」
この選択は本当に正しいのか。
それはジュゼッペ様にもわからないことだと思う。
それでも、これは誰かが止めなくてはいけない気がするのだ。
そして今、それは私しかきっといない。
だけど、止めることが本当に正しいのかさえ今の私にはわからない。
…あぁ。
考える内に何だか眠くなってしまった。
少し寝ようかな。
そうすれば良い考えが浮かぶかもしれない。
そう思い、着替えてベットに飛び込んだ。
意識を手放すのにそう時間はかからなかった。
『…………様』
ここはどこだろう。
目を閉じているはずなのに、何故だが目の前は明るい。
というより、何もない白い空間にいる気がする。
…一体なんだろう。
夢だとしても不思議なものだ。
『………シア様』
気のせいだろうか。
何処からか声がする。
「………?」
だが声のみで何もない。
「……変な夢」
頭が少し冴えてきた。
不思議とあらゆる感覚も戻ってきた。
『アイシア様…』
ようやく聞き取れたと思えば、まさかの自分を呼ぶ声。
その声の方向には、白いドレスを纏った女性がいた。
ベールがかかっていて顔は見えない。
「………え」
『アイシア様……』
「いや、私はアイシアですけど……誰?」
いきなり名を呼ばれたものの、目の前にいる人はおそらく私の知り合いでは無い。
「……どちら様で?」
『アイシア様………貴女に頼みがあって来ました』
「頼み…?」
『はい……もう貴女にしか頼めぬことです』
「私にしか……?」
見ず知らずの人に頼られても不安になるだけだが、これはあくまでも夢。
軽い気持ちで聞いてもバチは当たらないだろう。
『お願いします……』
「いや……私が役に立つかはわかりませんけど…。話を聞くくらいなら」
『はい…ありがとうございます』
「とりあえず…どうました?」
『あの子を…止めてほしいの。このままでは……きっと一生幸せになれないまま…生涯を終えることになってしまう…』
「あの子?」
『あの子……ジュゼッペのことです』
「え?……お知り合い?」
『私としたことが…無礼なことを……申し訳ありません、名も名乗らずに』
「いや…」
『初めましてアイシア様。私はサシェル・ギャルツ』
「ギャルツってジュゼッペ様と同じ…」
『はい。…ジュゼッペの母です』
お母様?
何故ここに!?
『貴女しか頼れないの…お願いします……』
あの、色々聞きたいのですが一ついいですか?
これは夢だよね?
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