Ωの僕がお偉いさん

白いモフモフ

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御披露目・移動

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 朝一番で汽車に乗る……って思うじゃない?違います。なんとなく嫌な感じがするので前の日の夕方に汽車で出発してしまった。もちろん変装しているからちょっと変な集団になってる。
 母様は侍女、僕は侍女見習い、爺はなぜか司祭の変装。シモンはバスケットに入って移動しているので誤魔化せているけど……主不在の使用人だけの移動って聞かないよね?

 本当なら僕達の移動は専用客室でするのだけど、それだとお忍び移動にならないので今回は普通の客室。それでも貴族用に作ってあるので見劣りや不便さはさほどないと思う。駅を出発してしまうと爺は元に戻り寝室を整えるべく出て行った。勿論母様の侍女さん達も行ったのでここにいる人数はぐっと減る。ちょっと息苦しかったので助かったよ。

「ノエルがこのタイミングで出発すると言ったのは正解だったかもね。」
これ
 母様?どういう事ですか?
“なんとなく嫌な感じがするので直ぐ出発します”という僕の言葉に従ってくれたのはそれなりの情報が母様には入っているの?

「……そうねぇ。情報は無いのだけれど、私達の予定は殆どの者が知っているわ。だけど私達は私達を快く思っていない者達の足取りを掴めていない。あの者達にとってこの移動は狙いやすいのよ。ノエルもわかっているからクルージングを手配したりこうやって直前で予定を変更したのでしょう?」

「うん……正直に言うなら母様と僕だけなら騎乗で押し切れると思うけど、シモンにそれは無理だし僕と離れての移動も考えられない。今、館で僕のふりをしているトータには悪いけど……。」

 そう、今トータは領主館で僕のふりをしてローランドとその護衛と一緒にいる。トータもこの御披露目は一緒に行くつもりで用意してもらっていたけどこの状況を知ったトータは影武者を申し出てくれたのだ。場合によってはとても危険なので影武者はダメと言ったけどローランドが自分が目を離さず兄上と一緒にいるつもりで居てくれると言うので、無理をしないでお留守番を頼んだのだ。

 それにトータが僕に言った「何かあったときボクは逃げる術を知らないから安全な所で守ってもらうのが一番なんだよ。」という言葉には確かにそうだなと頷くしかない。もっとも、それは僕にも当てはまっているんだけどね。

 寝室の用意が整ったというのでそれぞれの寝室へ引き上げる。僕の寝室は実は秘密の小部屋なんです!細い入口に体を滑り込ませシモンはバスケットごとでは無理なので抱っこして通り抜けた。
 ……シモンは最近抱っこすると自分でコアラのようにしがみついてくれるので楽なんだ。

 コアラシモンを抱いたまま僕の幅ギリギリの通路を通り寝室についた。ここも細い部屋でベッドの幅しかないけど、どうやっても転がり落ちないと思うと“これでも良いや”って思う。足下からベッドによじ登り、ベッドの上で服を着替え……おやすみなさい!
 コアラシモンはそのまま僕にしがみついたまま。爺は入口付近のカウチで寝てもらう。


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