あなたと再びの恋を

Saeko

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第二章 最愛の人との再会

第九話 公にしましょうか?2

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拓斗が運転する車でマンションを出た私達が到着したのは、拓斗が所属する芸能事務所だったの。
拓斗は車を事務局の地下駐車場に停めると、車中で変装 ┉ もっさりメガネ姿 ┉ を解きながら、何処かに電話をし始めたわ。そんな彼の横顔を見つめていると、
「じゃ、今から行きます」
と言って、拓斗はから電話を切ったの。そして彼から
「じゃ、優。行くよ!」
と言われ車から出る私の手を、助手席側に素早く移動した拓斗が取ると、そのまま社屋内に入って行く。そして直ぐにエレベーターに乗り込み、私達は社屋の最上階のフロアに到着したの。

会社の最上階にある部屋といえば、多くの会社に言える事だけれども、【社長室】等 会社を運営していく為の重要な部署があるというものよね。
案の定、拓斗が所属するこの芸能事務所の社屋最上階には社長室があり、その部屋の前で、おそらくであろう、某イタリアのブランドスーツをビシッと着こなし、眼鏡をかけた50代くらいの男性が笑顔で私達を出迎えてくれていたの。

「お疲れ様です、疋田さん」
と拓斗にそう声をかけられた眼鏡の男性社長秘書
「お疲れ様です、拓斗さん。社長がお部屋でお待ちです。」
とにこやかに答えると、今度は私の方を視線だけで見ると、
「こちらが例のお嬢様ですね?」
と言ったわ。そう言って疋田さんは私にもその笑顔を向けてはくれたのだけれど、拓斗に向けたそれとは少しだけ冷たさを感じてしまうものだったの。私は少し居心地が悪くなったのだけど、
「優。社長のとこ行くよ?」
と拓斗に促された事で、少し気持ちを持ち直す事が出来たの。

コンコン

「拓斗か?入りなさい」
「失礼します」
拓斗と共に社長室へ足を踏み入れると、立ち上がって私達を出迎えてくださったのは、頭髪に少し白い物が混じるものの、お姿はとても若々しい、多分60代と思しき男性だったの。ハイブランドスーツに身を包んでおり、長身でスリムなそのかたは、
「ようこそお越しくださいました。私、こういう者です。」
と仰いながら名刺を差し出されたわ。
私はそのお名刺のお名前を拝読していると、
「失礼ながら…貴女様は、七菱物産のお嬢様ではありませんか?」
と問われた為
「はい。私は、七菱物産の長女で七菱優花と申します。私の記憶違いでなければでございますが…黒石様とは初対面では無かったかと?」
とお返事したの。すると社長は、
「こうして、優花様と直接ご挨拶申し上げますのは初めてですが、お父上とは何度かお会いした事がありますよ。それから…との事も存じ上げておりまして……。残念な結果になられたと…。もう大丈夫ですか?」
と口ごもってしまわれた黒石社長の、例の"お方”という言葉で、あ~この方もアノ婚約式に来られていたのだわと思ったわ。だから私は笑顔を浮かべ、
一柳院家あちらとの破談に関しましては、既に解決済みですし、私にとって彼等の事は遠い昔のお話になりました。ですが、ご心配のお言葉を賜りました事、痛み入ります。」
とそう申し上げれば、黒石さんも漸く笑顔になって下さったわ。

そんな私達のやり取りを見ていた拓斗が、
「ねぇ。いつまで待てばいいの?」
と、少し不貞腐れながらそう言うと、社長室のソファにドサッと座り込んだの。

「ごめんなさい、拓斗」
と私が申し訳ない思いでそう言うと、黒石社長も
「待たせて悪かったね」
と拓斗に笑ってそう仰ったの。そして
「七菱さんもお掛け下さい」
と着席を促された私は「失礼致します」と拓斗の横に腰掛けたのね。
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