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3 転生令嬢ソフィア・レイド・グレーン

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 『・・・まーたやってる』


 口の中の芳醇ほうじゅんなチョコレートの風味を堪能しながら半目になり、シルファ王子とリーナ嬢、そして侍従中のアジェスのやり取りをシラけた顔で眺めるソフィア・レイド・グレーン嬢。

 偉大なる王国の端に広大なる土地と魔物の彷徨うろつく森を有する辺境伯の嫡女である。


 『乙女ゲーの展開なら今日辺りで婚約破棄とか言い出すんだろうけどねぇ』


 婚約者が堂々と他の女性を公の場でエスコートするとか乙女ゲーかよ、何やってんだか・・・

 と、冷静に観察する彼女はお約束の転生者。

 現代日本語のWEB小説を少々嗜みながら自立生活をしていた元社畜女子。

 働き過ぎ改革事業の波に乗れずにあっけなく過労死した前世持ちである。


 残業続きで目眩を覚えながら、モ◯スターエナジーの飲みすぎで足がおぼつかなくなり地下鉄の階段から転げ落ちてあっけなく昇天し気が付いたら転生していた。

 そこそこの地位どころか、父親が王弟で辺境伯であり国の半分近い土地を有する実力者だった事に狂喜乱舞したのがよわい6歳の頃。

 しかも騎士やら魔法やら魔物やらが乱立する世界で母親譲りの美幼女っぷりを自覚した途端自分の人生を魔法少女一択に絞りきったのは当然の成り行きだ。


 毎日毎日転生者特典であろう翻訳機能をフルに使って書庫に籠って魔法の自主練習を繰り返し自ら倒れるくらいには魔力を酷使したお陰で10歳の魔力検査の時に検査水晶が絶えられなくなり爆発したのはいい思い出? である。

 検査室は勿論ぶっ壊れ、併設された教会の尖塔は傾いたが父親が新規の教会を建設してそこを更地にしてしまった。

 可愛い娘を兄である国王に盗まれてたまるかという隠蔽工作だったが残念なことにその数年後、お忍びでやって来ていた王妃に森で魔獣を魔法で燃やしていた所を見つかってしまい敢え無く王太子の婚約者にされてしまったのである。


 「嫌だ~! ウチのかんわゆいソフィーたんを兄上の所になんからないっ!」


 と、兵を挙げそうになった王弟おやじをドウドウと宥めたのは当時12歳だったソフィア本人である。


 「王子が不貞を働いたり、婚約者としての義務を放棄した場合は即日婚約白紙撤回」


 と。


 国王夫妻を雷魔法でお願いして念書を書かせて納得させたのは当の本人のソフィアである。


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