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42 雇い主は?冒険者ギルド?
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「で、あの例の冒険者と名乗る他国の山賊っぽい野盗集団はどこから来たのですか?」
辺境伯夫人が退室して行った後、ソフィアがチャッピーを膝に載せ直して薫り高い紅茶が注ぎ入れられたティーカップを口元に運ぶ。
――もはや野盗集団としか言ってない。
「それがね、どうも本当にギルド所属の冒険者だったんだよ。出身国はバラバラなんだけど我が国出身の者はいなかったんだよねー」
ディアミドが頬杖をつきながら執務机の上の資料をパラリと捲り溜息をついた。
「情報もギルドから入手したようです。辺境領からの討伐依頼は出していませんので彼らの態度から察するにベヒモスを略奪しに来たと考えて良いでしょう」
小隊長も困った顔をする。
「狙いは『ベヒモスの呼ぶ魔石だ』と、はっきりと口にしたらしいですからね」
――チャッピーを従魔にしたばかりなのに早くも何者かに狙われている事が判明し若干不機嫌になるソフィアである。
×××
ギルドはどの国にも属さない独立機関であり国の権限が及ばない組織だ。
大まかに商業、職人、冒険者、薬師という4つに別れているのだが、どのギルドも個人だろうが国だろうが関係なくギルドを通し様々な依頼を発注することが出来る。
そして厄介なことにギルド側は第三者による依頼主の開示請求を拒否することができる権限があるのだ。
災害級の魔物の出現やスタンピード、悪性の流行病など住民を避難させなければいけないような場合に限ってギルドからギルド構成員を派遣する事があるのだがこの場合依頼主は問題の起こった土地の領主ではなくギルド長である。
今回の場合は依頼主は冒険者ギルドだ。
そして依頼主がギルドだった場合でも開示拒否は適応されるため結局の所有耶無耶にされる可能性がある。
彼らは今回その自主的にギルドが派遣した冒険者だという主張をしているのである。
「ギルド側に問い合わせるしかないでしょう。彼らの主張の通りなら辺境伯領として冒険者の素行不良行為の申立をする位しか手がありません」
資料をめくりながら小隊長が続ける。
「もし彼らが勝手に魔の森に乗り込んできていたのなら辺境伯領部隊への作戦妨害行為のペナルティが発生しますので冒険者クラスの降格処分もしくは資格の取り消し。その程度の罰則となるでしょうな」
彼の言葉を聞きながら、
「ヌルいわねえ~」
ソフィアが口を尖らす。
「ああ。そうだ・・・」
それまでソフィアの口元にフォークでケーキをせっせと運んでいたシルファがそれを急に止めて微笑んだ。
「王太子に対する暴言による不敬罪も申し立てに盛り込んでおいてくれるかい? 証人は大勢いるから大丈夫だよ。魔道具による記録映像もある」
――恐ろしい程準備万端である・・・
「そんなことあったの?」
「ああ。だから彼らは服も装備も無くなったんだからね」
「・・・ 破損した装備は王太子に対する不敬罪の物的証拠になるのかしら?」
――王太子による器物破損罪じゃないか?
アジェスが一瞬、遠い目になったのだが。
「王族に対する不敬罪の場合はギルドがいくら治外法権でも王国法が優先される。ギルド側が冒険者を庇い立てするのであれば罰則をギルドそのものが被る事になるだけだ」
「「「「「成程!!」」」」」
「さすがシル! 頭いい~!」
――担げる神輿は多いに越したことは無いという事である・・・
辺境伯夫人が退室して行った後、ソフィアがチャッピーを膝に載せ直して薫り高い紅茶が注ぎ入れられたティーカップを口元に運ぶ。
――もはや野盗集団としか言ってない。
「それがね、どうも本当にギルド所属の冒険者だったんだよ。出身国はバラバラなんだけど我が国出身の者はいなかったんだよねー」
ディアミドが頬杖をつきながら執務机の上の資料をパラリと捲り溜息をついた。
「情報もギルドから入手したようです。辺境領からの討伐依頼は出していませんので彼らの態度から察するにベヒモスを略奪しに来たと考えて良いでしょう」
小隊長も困った顔をする。
「狙いは『ベヒモスの呼ぶ魔石だ』と、はっきりと口にしたらしいですからね」
――チャッピーを従魔にしたばかりなのに早くも何者かに狙われている事が判明し若干不機嫌になるソフィアである。
×××
ギルドはどの国にも属さない独立機関であり国の権限が及ばない組織だ。
大まかに商業、職人、冒険者、薬師という4つに別れているのだが、どのギルドも個人だろうが国だろうが関係なくギルドを通し様々な依頼を発注することが出来る。
そして厄介なことにギルド側は第三者による依頼主の開示請求を拒否することができる権限があるのだ。
災害級の魔物の出現やスタンピード、悪性の流行病など住民を避難させなければいけないような場合に限ってギルドからギルド構成員を派遣する事があるのだがこの場合依頼主は問題の起こった土地の領主ではなくギルド長である。
今回の場合は依頼主は冒険者ギルドだ。
そして依頼主がギルドだった場合でも開示拒否は適応されるため結局の所有耶無耶にされる可能性がある。
彼らは今回その自主的にギルドが派遣した冒険者だという主張をしているのである。
「ギルド側に問い合わせるしかないでしょう。彼らの主張の通りなら辺境伯領として冒険者の素行不良行為の申立をする位しか手がありません」
資料をめくりながら小隊長が続ける。
「もし彼らが勝手に魔の森に乗り込んできていたのなら辺境伯領部隊への作戦妨害行為のペナルティが発生しますので冒険者クラスの降格処分もしくは資格の取り消し。その程度の罰則となるでしょうな」
彼の言葉を聞きながら、
「ヌルいわねえ~」
ソフィアが口を尖らす。
「ああ。そうだ・・・」
それまでソフィアの口元にフォークでケーキをせっせと運んでいたシルファがそれを急に止めて微笑んだ。
「王太子に対する暴言による不敬罪も申し立てに盛り込んでおいてくれるかい? 証人は大勢いるから大丈夫だよ。魔道具による記録映像もある」
――恐ろしい程準備万端である・・・
「そんなことあったの?」
「ああ。だから彼らは服も装備も無くなったんだからね」
「・・・ 破損した装備は王太子に対する不敬罪の物的証拠になるのかしら?」
――王太子による器物破損罪じゃないか?
アジェスが一瞬、遠い目になったのだが。
「王族に対する不敬罪の場合はギルドがいくら治外法権でも王国法が優先される。ギルド側が冒険者を庇い立てするのであれば罰則をギルドそのものが被る事になるだけだ」
「「「「「成程!!」」」」」
「さすがシル! 頭いい~!」
――担げる神輿は多いに越したことは無いという事である・・・
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