鬼の名語り

小目出鯛太郎

文字の大きさ
44 / 46

ひとつ

しおりを挟む
朽木くちき良いか?」
 と耳元で囁かれた時、朽木は戸惑った。

 『途中でわからなくなったら、何の怖い事もないよ、鋼にねぇ、全部お任せしますって言ってあんたは目を瞑って鋼に引っ付いていれば良いんだからね。出来そうかい?』
 棗婆なつめばばの言った言葉が頭に蘇る。

 いま、だめと言わなくていけないような気がする。でも鋼に気も、貰わなくてはいけないのに。
 鋼としていることは、岩館が忘れてしまえと言った時の動きに似ていた。
 それよりもずっとゆっくりとして、お互いに身体を御探りをして、朽木は鋼のかすれた甘い声など初めて聞いてどうしようもないほどに頬が熱くなった。

 気持ちが良くて、わからなくなってしまった、だから全部お任せしますといえば良いのだ…。朽木は鋼の身体の下で震えた。
「ひとつになっても良いか」

 そう聞かれて、全部言うことが出来ずに朽木はうん、と言った。もうそれしかいえないほどに身体はとろとろにとろかされ、鋼の切先が朽木の中へゆるゆると埋め込まれていった。

 硬くて歪なものが身体の中を押し広げて少しずつ朽木の中に挿入される。朽木はただはぁはぁと息を荒げて目を瞑り鋼に縋り付いていた。開かれた両足の間をそのまま裂かれてしまうのではないかと思うほどに足を広げている。そこに鋼の身体が入り込んでいる。

 鋼の抜き身をぴったりと包み込み、朽木の細い腕は溺れた者がしがみつくように鋼の背に回されていた。
 鋼は朽木と身体を繋げながら、その細い身体の中に傷ついたようなうろがあるのを感じ取った。
「朽木、俺とひとつになると言って」
 この傷を埋めるから、と鋼は優しく嘘を言った。そんな言葉を言わなくてもこの傷は癒せる。

「はがねと、ひとつになる?」
「そうだ、朽木とひとつになる」

 それは番になる者同士がお互いに捧げる言葉だった。朽木は知らなかった。誰も、鋼も、岩館さえも朽木に教えなかったからだ。

 朽木は知らない間に鋼の番になった。朽木の身体は何の抗うこともなく鋼を受け入れた。
 今まで優しく包まれ、抱え上げられ、そばについて髪を漉き、水を飲ませ、ずっと守り横で眠る。番が当たり前にやる事を二人はすでにしていて、朽木の心には鋼に対する恐れもなく信頼し安心していたからだ。

 朽木と鋼は結び合わさりひとつになった。


 その洞をぴったりと満たせるのは俺しかいない、と岩館が傷つけた穴を、ゆっくりと鋼が埋めた。熱く溶けて、その隙間を隙間を狂いなく満たしてしまう。番は心が通っていれば互いの傷を癒すことができる。二人の間にあるのは愛ではないかもしれないが、朽木は鋼が自分を傷つけることは無いと心の奥底から思い身を任せきっていたし、鋼にあるのはただ朽木に対する所有欲と…やはり尽きぬ愛情だった。

 朽木の身体の中に岩館の残した種など無かった。ただ有ったのは深い傷だ。

 鋼は番を得たい、抱きたいがために嘘をついた。これから朽木の身体の中で根付くのは鋼の種だ。いつか宿る鋼と朽木の子。
 ただ木の番が欲しいと思っていた時よりもずっと朽木が愛おしく、もう離せるはずが無かった。

 あっ、あ…と朽木が声を上げる。
 鋼は優しく波のように身体を揺らす。繋がったまま朽木が欲しがるまで、泣き出すまであやすように甘く鋼の埋め込まれたものをは朽木の敏感な場所をくすぐり、押し上げ愉悦の響きを身体の先端まで贈り包み込んだ。
「気をおくられると心地良いだろう?」

 朽木は返事も出来ずに震え続ける。身体の中で弾け続けるようなそれをどうして良いか分からず、朽木の唇からは吐息が溢れる。鋼にとっては朽木が快感を覚え絶頂を知るその表情を見るのは雄を激しく刺激されたまらないものがあった。

 そうして朽木は包まれて揺らされ続け、鋼は愛おしい番を抱えて揺らし続けた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

降っても晴れても

凛子
恋愛
もう、限界なんです……

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

お義父さん、好き。

うみ
恋愛
お義父さんの子を孕みたい……。義理の父を好きになって、愛してしまった。

処理中です...