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26.祖国での立場

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 私は、ドルマニア王国へと向かっていた。
 今回、私があちらの王国に行くことができるのは、アグナヴァン様が色々と働きかけてくれたからだ。
 隣国の危機に力を貸したいという彼の願いを受け入れたドルマニア王国は、私という罪人を受け入れたのである。

「そもそもの話、ドルマニア王国は私が生きているとは思っていなかったのかもしれませんけど……」
「ああ、それはその通りだ。あなたのことを伝えた時、あちらの王国はかなり動揺していたように見えた」
「まあ、そうですよね……」

 アグナヴァン様は、魔法でドルマニア王国と通信したそうだ。
 私自身が出て行くべきかと考えていたが、それはアグナヴァン様が止めてくれた。彼が、私のことを気遣ってくれたのである。

「あちらの王国で、あなたはどのような立場だったのだ? 通信魔法を使っていた者達は、あなたの部下だったと思うのだが、その反応は微妙なものだった」
「そうですね……」

 アグナヴァン様の質問に、私は少し考えることになった。
 基本的に、私は部下達から慕われていたように思える。しかし、実際の所どうだったのか、それは少し微妙な所だ。
 私は捕まってから部下達と特にやり取りをしていない。もちろん、捕まっている私の元に来るというのはそれなりに難しいことなので、ある程度は理解できる。だが、もしも私のことを慕っている人がいれば、来てくれるものではないだろうか。

 よく考えてみれば、私は部下達と特に親しくしていた覚えはない。
 そういった面も考えると、私はあちらの王国において、あまりいい立場という訳ではなかったのかもしれない。

「……すまない。余計なことを聞いてしまったか?」
「え? いえ、そんなことはありませんよ」

 私の表情が変わったからか、アグナヴァン様は心配そうに声をかけてきた。
 少し前から思うようになったことだが、彼は意外と心配性である。私が少し暗い顔をするだけで、かなり心配してくるのだ。
 それは、彼の優しさ故のことなのだろう。そんな彼のことを、私は素晴らしい人だと思っている。

「まあ、私は慕われていたという訳ではないと思います。特に親しい人もいませんでしたし……」
「……そうか」

 私の言葉に、アグナヴァン様は少し悲しそうな笑みを浮かべていた。
 やはり、彼はとことん優しい人である。

「でも、助けてくれる人はいたんですよ? ほら、パストマン教授は、私の味方をしてくれていた訳ですし……」
「それは……そうだな」

 ドルマニア王国に 私の味方はほとんどいなかった。
 だが、先生のように心強い味方がいたのだ。数少ないとはいえ、彼のような味方がいた私は、充分恵まれていたといえるだろう。
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