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10.彼女の目的(ソルーガ視点)
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「ソルーガ、話はまだ終わらないぞ? もっと面白いものが見られる」
「もっと面白いもの?」
「ほら、見てみろ」
「うん……?」
アルトアは、男性から宝石を受け取った。
彼女は、それに大いに喜んでいる。要するに、贈り物をしてもらっているということだろう。
だが、それは別に面白いものではない。
そういう関係であるなら、贈り物くらいはするだろう。あれが、なんだというのだろうか。
「あれ? もう別れるのか?」
「ああ、ギルッグ・ドーマーン侯爵令息はこれから所用があるからね」
「そんなことまで調べていたのか……」
「ここからが重要だ。彼女を尾行しよう」
「あ、ああ……」
俺は、ディルギンとともにアルトアの後を追っていく。
この男に付き合っている内に、俺は尾行が上手くなっていた。この技術は、貴族として役に立つこともないだろうし、時々自分が何をやっているのかわからなくなってくる。
「うん? あれは、宝石店か?」
「ああ、彼女がここに何をしに来たと思う?」
「……まさか、先程の宝石を売りに来たのか?」
「その通りだ。流石だね」
ディルギンは、また楽しそうな笑みを浮かべていた。
曲がりなりにも関係を持っている男性からの贈り物をすぐに売る。それは確かに、非常におかしいことではあるだろう。
「……でも、どうして宝石を売るんだ。よく考えてみれば、あいつは伯爵家の令嬢である訳だし、わざわざ金を作る必要があるとは思えないが……」
「さて、それはこれからわかることさ」
「わかることね……」
ディルギンは、基本的に答えをすぐに教えてくれない。
俺が実際に見て驚く反応を楽しみたいのか、このようにはぐらかしてくるのだ。
もう慣れたので何も思わないが、最初はそれが少し鬱陶しかった。
早く答えを教えろ。何度もそう思ったものだ。
「……おっと、出て来たみたいだぞ?」
「おっ……」
しばらく待っていると、アルトアが宝石店から出てきた。
その顔は笑みが浮かんでいる。お金が得られて、ご機嫌といった所だろうか。
彼女は、その足でそのままとある場所に向かった。
当然、俺達もそれについていく。
「……ちょっと待て、あれは」
「ああ、所謂、賭博場という奴だね」
「ギャンブル……まさか、あの金を使っているのか?」
「そういうことになるだろうね」
アルトアが辿り着いたのは、賭博場だった。
お金を賭けて、ゲームを行う場所に、彼女は嬉々として入っていたのだ。
そのことに、俺は頭を抱える。単純に一人の人間として、彼女の行動に頭痛がしてきたのだ。
「……つまり、彼女はギャンブルをするために、複数の貴族と関係を持っているということなのか?」
「ああ、そういうことなのかもしれない」
「そんな馬鹿な……」
アルトアは、かなり自堕落的な生活を送っているのだろう。
ギャンブルで失った金を、貴族達を誑かすことによって得て、またギャンブルに向かう。そんな生活をする意味が、俺にはまったくわからない。
「……ただ、もしかすると、彼女は危険を楽しんでいるのかもしれないね」
「……どういうことだ?」
「ギャンブルも浮気も、全てはリスクを伴うものだ。彼女は、その結果ではなく過程を楽しんでいるのではないだろうか? 時にソルーガ、君はバンジージャンプというものを知っているかな?」
「知っているとも。高い所から、紐をつけて落ちるやつだろう?」
「あれと同じさ。言ってしまえば、それはおかしいものだろう? わざわざ、危険なことをする。だが、それを楽しいと思う者もいる。彼女の場合は、それが極端ということなのではないかと、僕はそう思うのさ」
ディルギンは、楽しそうにアルトアのことを解説していた。
彼女の本当の心なんてものは、俺にはわからないし、興味もない。
だが、もしもこいつの言う通りなのだとすると、それはまた難儀な性である。
「もっと面白いもの?」
「ほら、見てみろ」
「うん……?」
アルトアは、男性から宝石を受け取った。
彼女は、それに大いに喜んでいる。要するに、贈り物をしてもらっているということだろう。
だが、それは別に面白いものではない。
そういう関係であるなら、贈り物くらいはするだろう。あれが、なんだというのだろうか。
「あれ? もう別れるのか?」
「ああ、ギルッグ・ドーマーン侯爵令息はこれから所用があるからね」
「そんなことまで調べていたのか……」
「ここからが重要だ。彼女を尾行しよう」
「あ、ああ……」
俺は、ディルギンとともにアルトアの後を追っていく。
この男に付き合っている内に、俺は尾行が上手くなっていた。この技術は、貴族として役に立つこともないだろうし、時々自分が何をやっているのかわからなくなってくる。
「うん? あれは、宝石店か?」
「ああ、彼女がここに何をしに来たと思う?」
「……まさか、先程の宝石を売りに来たのか?」
「その通りだ。流石だね」
ディルギンは、また楽しそうな笑みを浮かべていた。
曲がりなりにも関係を持っている男性からの贈り物をすぐに売る。それは確かに、非常におかしいことではあるだろう。
「……でも、どうして宝石を売るんだ。よく考えてみれば、あいつは伯爵家の令嬢である訳だし、わざわざ金を作る必要があるとは思えないが……」
「さて、それはこれからわかることさ」
「わかることね……」
ディルギンは、基本的に答えをすぐに教えてくれない。
俺が実際に見て驚く反応を楽しみたいのか、このようにはぐらかしてくるのだ。
もう慣れたので何も思わないが、最初はそれが少し鬱陶しかった。
早く答えを教えろ。何度もそう思ったものだ。
「……おっと、出て来たみたいだぞ?」
「おっ……」
しばらく待っていると、アルトアが宝石店から出てきた。
その顔は笑みが浮かんでいる。お金が得られて、ご機嫌といった所だろうか。
彼女は、その足でそのままとある場所に向かった。
当然、俺達もそれについていく。
「……ちょっと待て、あれは」
「ああ、所謂、賭博場という奴だね」
「ギャンブル……まさか、あの金を使っているのか?」
「そういうことになるだろうね」
アルトアが辿り着いたのは、賭博場だった。
お金を賭けて、ゲームを行う場所に、彼女は嬉々として入っていたのだ。
そのことに、俺は頭を抱える。単純に一人の人間として、彼女の行動に頭痛がしてきたのだ。
「……つまり、彼女はギャンブルをするために、複数の貴族と関係を持っているということなのか?」
「ああ、そういうことなのかもしれない」
「そんな馬鹿な……」
アルトアは、かなり自堕落的な生活を送っているのだろう。
ギャンブルで失った金を、貴族達を誑かすことによって得て、またギャンブルに向かう。そんな生活をする意味が、俺にはまったくわからない。
「……ただ、もしかすると、彼女は危険を楽しんでいるのかもしれないね」
「……どういうことだ?」
「ギャンブルも浮気も、全てはリスクを伴うものだ。彼女は、その結果ではなく過程を楽しんでいるのではないだろうか? 時にソルーガ、君はバンジージャンプというものを知っているかな?」
「知っているとも。高い所から、紐をつけて落ちるやつだろう?」
「あれと同じさ。言ってしまえば、それはおかしいものだろう? わざわざ、危険なことをする。だが、それを楽しいと思う者もいる。彼女の場合は、それが極端ということなのではないかと、僕はそう思うのさ」
ディルギンは、楽しそうにアルトアのことを解説していた。
彼女の本当の心なんてものは、俺にはわからないし、興味もない。
だが、もしもこいつの言う通りなのだとすると、それはまた難儀な性である。
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