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4.もたらされた事実

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 目の前にいる長髪の男性は、鋭い視線をこちらに向けてきている。
 その彼こそが、イルベリード侯爵家の長男ゼルフォン侯爵令息だ。次期侯爵としての威厳に溢れた彼は、私とお父様に交互に見ている。

「……まずはお二人に謝罪しなければなりませんね。突然の訪問、申し訳ありません」
「急な訪問には、確かに驚きました。しかしそれは、それなりに理由があってのことなのでしょう? そうでなければ、このような訪問はあり得ない」
「ええ、実の所、私はとある事実を知りました。その事実は、あなた方にも話すべきことであるかと思いまして」
「ほう……」

 ゼルフォン様は、私達に対して友好的な雰囲気だった。
 判断は早計かもしれないが、彼が何かしらのクレームを入れに来た可能性は低そうだ。それ所か、何かしらの危機を警告しに来てくれた可能性さえある。

「一体、何があったのですか?」
「ローガル・ヴァルガド伯爵令息のことです」
「ローガル……彼が、どうかしましたか?」

 ゼルフォン様の言葉に、私は息を呑む。ローガルの名前が出て来て、思わず体を震わせてしまった。
 まさか、彼に何かあったのだろうか。少し嫌な予感がする。怪しい馬車という心当たりもあるし、大丈夫だろうか。

「アラドム伯爵、私には妹がいます」
「む?」

 そこでゼルフォン様は、訳がわからないことを言い出した。
 彼の家族構成が、どうかしたのだろうか。それがローガルと関係しているとは思えないのだが。

「あなたの妹君が、どうかしましたか?」
「ソルリアといいます。彼女の最近の動向が、私は気になっていました。なんというか、怪しい動きをしていたのです。そこで私は、調査を行いました。その結果、あることがわかったのです」
「あること、ですか。なるほど……」

 ゼルフォン様の言葉を聞いて、お父様はゆっくりとため息をついた。その落胆するような様に、私も理解する。ゼルフォン様が、何を言おうとしているのかわかったのだ。
 ただ、それは私にとっては信じられないことである。私はゆっくりと息を呑む。できれば想像しているのとは別のことを言ってもらいたい所だ。

「ソルリアはローガル伯爵令息と懇意にしています。恐らく二人は、男女の仲であると考えるべきでしょう」
「男女の仲……やはり、そういった話ですか」
「そ、そんな……」

 ゼルフォン様は、私が予想していた通りのことを口にした。
 それによって、私は固まってしまう。その事実に、ただ唖然とすることしかできない。これが現実であると信じたくなかった。
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