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5.珍しい同席

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 夕方、食堂まで来た私は、先客の姿に少しだけ驚くことになった。
 そこにいるのは、アルフェルグ様だ。食事は別々になることが多いので、こうして顔を合わせるだけでもそれなりの驚きがある。
 ただ、アルフェルグ様の方は特に驚いてはいない。つまり、彼にとっては予測できることだったということだろう。

「……私に、何か御用ですか?」
「……いや」

 私は思わず、アルフェルグ様に問いかけていた。
 彼は私を待ち構えていた。つまり用がある。そう考えていたのだが、どうにもアルフェルグ様の反応は悪い。

 まさか彼が、ただ単に私と食事をすることを目的に待っていたというのだろうか。
 いや、それよりは偶然食事したい時間が私と被っただけかもしれない。この後何かやることがあるのだろうか。夜分に仕事をするのは、あまり良くないと思うのだが。

「馬車の中で話したことを改めて話したいと思ったのだが……」
「馬車の中で話したこと……舞踏会に慣れないとか、そういう話でしょうか? まあ、私は大丈夫ですよ」

 アルフェルグ様は、やはり私に用があったらしい。
 だから単純に、食事の時間を合わせたということだろう。
 とりあえず私は、アルフェルグ様の対面に座る。別に断る理由もないので、話し合いには応じるつもりだ。

「……考えてみれば、見習うべき先人が傍にいたというのにそれらのことを聞いていなかったというのは間抜けなものだな」
「……間抜け、ということはありませんよ。先人といっても、私もまだまだ未熟者ですし」

 私は、そこまで優秀な貴族という訳でもない。
 対人関係においては、むしろアルフェルグ様の方が優れているような気もする。故に私が彼の参考になるのか、それは微妙な所だ。

「それに、馬車の中でも言った通り、アルフェルグ様の振る舞いに問題などはありません。特に改めるような点はないと思いますが」
「もちろん、今のままでいいというなら、それでも構わない。ただ、俺は君が貴族として歩んできた人生というものを聞いてみたいと思っている。それは俺の今後の躍進に関わることだ」
「……なるほど、確かにアルフェルグ様なら私のこれまでの人生から、何か新しい発見をできるのかもしれませんね」

 アルフェルグ様は、優秀な人である。非凡な私とは違って、私の人生から何かを見つけ出すかもしれない。
 それなら、私がこれまでにどのような道を歩んできたのかを伝えたい所だ。ただいざ話そうと思うと、言葉が出て来ない。何から話せばいいのか、わからないのである。

「えっと、そうですね。私が生まれたのは……」
「ふむ……」

 悩んだ結果、私は最初から話すことにした。
 それからしばらく、私はアルフェルグ様に自分の人生を話すのだった。
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