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第49話 彼の過去②(カルード視点)

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 俺が自身の真実を知ることになったのは、ある日の出来事だった。
 その日、俺は母上とともに侯爵家であるヴァスティオン家の屋敷に招かれていた。
 この家に来ると決まってから、母上はずっと浮かない顔をしている。そのため、ここに来たくなかったと思っているのは明白だ。
 だが、俺にはその理由がわからなかった。貴族とのやり取りなど慣れているはずの母上が、侯爵家の屋敷に行きたくない理由など見当もつかないのである。

「待たせたね、カルニラ」
「フェリンド、私に対して、そのような口の利き方は……」
「そっちがカルード君か」

 客室らしき部屋で待っていた俺達の元に、一人の男がやって来た。
 フェリンド・ヴァスティオン。この侯爵家の現当主であるらしい。
 フェリンドという男は、やけに母上に馴れ馴れしくしていた。それに対して、母上は明らかに嫌がっている。ここに来たくなかった理由は、この男にあるようだ。

「フェリンド、もし余計なことを言うつもりなら……」
「別に、余計なことなんて言うつもりはないさ。ただ、君もその子にもきちんと認識してもらう必要があるというだけのことだよ」
「何を言っているの?」

 フェリンドの言葉に、母上は動揺していた。
 一連の流れを見て、俺は違和感を覚えていた。
 先程から、この男は俺に視線を向けてきている。その温かい視線は、まるで親が子に向けるような視線だ。
 そのような考えから、俺はとても嫌な予感がしていた。二人が、俺に向けていた視線と正反対のものを、この男が向けている。それがどういうことなのか、予想がつかない程、俺は愚かではない。

「カルード君は、僕と君の子なのだろう?」
「それは……」

 フェリンドの口から出た言葉に、俺はあまり驚かなかった。
 その言葉が予想できていたからだろう。
 一方、母上はかなり焦っていた。それは当然だろう。母上にとって、これは恐らく隠しておきたかったことであるはずだからだ。

「そんなことはないわ。何を証拠に……」
「君だってわかっているだろう。彼は、僕にそっくりだ」
「そ、それは……」

 フェリンドの言葉に、母上はさらに動揺した。
 自分ではわからないが、俺はフェリンドに似ているようだ。
 確かに、俺は今まで母親似と言われていたが、父親似と言われたことは一度もない。
 それは、当然のことだったのである。俺の父親はこの男なのだから、父上に似ている訳がなかったのだ。
 恐らく、それを父上は理解していたのだろう。だから、あのような冷たい目を向けてきていたのだ。
 こうして、俺は自身の真実を知ることになったのである。
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