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第57話 彼の過去⑨(カルード視点)
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俺は、いつも通り庭で待っていた。
そこにやって来たのは、ナルミナである。
いつからか、俺は庭に彼女がやって来るのを待つようになっていた。その不思議な気持ちの名前を、俺はまだ知らない。
「今日も……失礼しますね」
「む? ああ……」
やって来たナルミナの様子がおかしいことに、俺はすぐに気づいた。
顔色が、明らかに悪いのだ。体調不良であるとしか思えない。
「体調が悪いのか?」
「いえ、大丈夫です。少し、疲れているだけですから」
「疲れているなら、部屋で休んでいればいいものを……」
「外の空気を吸った方が、いいと思ったのです」
ナルミナは、少し疲れているだけだと言った。
しかし、疲れだけでここまでなるものなのだろうか。
その疑問が、俺の中で反芻する。何かが起こっているのではないか。そのような疑念が、頭の中に響いてくるのだ。
「望むなら、医者を呼んでやるぞ?」
「そんなことは、カルニラ様が許しませんよ……」
「俺が強く言えば、母上も折れるだろう」
「いえ、カルード様の立場が悪くなりそうなので、大丈夫です。本当に、疲れているだけですから、きっと一晩休めば治ります」
医者を呼ぶという俺の提案を、ナルミナは否定してきた。
彼女は、俺の立場を気にしているようだ。母上と対立すれば、俺の立場は悪くなる。そう思うのは、当然のことだろう。
しかし、俺にはそんなことは関係なかった。俺は、母上の弱みを握っている。母上は、俺に逆らうことなどできないのだ。
「医者を呼んでやる。そして、一度診てもらえ。倒れられたりしたら、寝覚めが悪い」
「……カルード様は、優しいのですね」
「何?」
「その優しさが……いえ、なんでもありません」
俺に何かを言いかけて、ナルミナは口を止めた。
その顔には、何か憂いのようなものが見える。その憂いに対して、俺は何か嫌な予感を覚えてしまう。
「それでは、これで失礼します。お花、ありがとうございました」
「あ、ああ……」
笑顔で去って行くナルミナの背中を、俺は見ていることしかできなかった。
どうしていいのか、わからなかったのだ。去り行く彼女の寂しい背中に、俺はなんと声をかければいいのかわからなかった。
これから、何かが起こるかもしれない。それがわかっているのに、何もできない自分に、俺は悔しさを覚えるのだった。
そこにやって来たのは、ナルミナである。
いつからか、俺は庭に彼女がやって来るのを待つようになっていた。その不思議な気持ちの名前を、俺はまだ知らない。
「今日も……失礼しますね」
「む? ああ……」
やって来たナルミナの様子がおかしいことに、俺はすぐに気づいた。
顔色が、明らかに悪いのだ。体調不良であるとしか思えない。
「体調が悪いのか?」
「いえ、大丈夫です。少し、疲れているだけですから」
「疲れているなら、部屋で休んでいればいいものを……」
「外の空気を吸った方が、いいと思ったのです」
ナルミナは、少し疲れているだけだと言った。
しかし、疲れだけでここまでなるものなのだろうか。
その疑問が、俺の中で反芻する。何かが起こっているのではないか。そのような疑念が、頭の中に響いてくるのだ。
「望むなら、医者を呼んでやるぞ?」
「そんなことは、カルニラ様が許しませんよ……」
「俺が強く言えば、母上も折れるだろう」
「いえ、カルード様の立場が悪くなりそうなので、大丈夫です。本当に、疲れているだけですから、きっと一晩休めば治ります」
医者を呼ぶという俺の提案を、ナルミナは否定してきた。
彼女は、俺の立場を気にしているようだ。母上と対立すれば、俺の立場は悪くなる。そう思うのは、当然のことだろう。
しかし、俺にはそんなことは関係なかった。俺は、母上の弱みを握っている。母上は、俺に逆らうことなどできないのだ。
「医者を呼んでやる。そして、一度診てもらえ。倒れられたりしたら、寝覚めが悪い」
「……カルード様は、優しいのですね」
「何?」
「その優しさが……いえ、なんでもありません」
俺に何かを言いかけて、ナルミナは口を止めた。
その顔には、何か憂いのようなものが見える。その憂いに対して、俺は何か嫌な予感を覚えてしまう。
「それでは、これで失礼します。お花、ありがとうございました」
「あ、ああ……」
笑顔で去って行くナルミナの背中を、俺は見ていることしかできなかった。
どうしていいのか、わからなかったのだ。去り行く彼女の寂しい背中に、俺はなんと声をかければいいのかわからなかった。
これから、何かが起こるかもしれない。それがわかっているのに、何もできない自分に、俺は悔しさを覚えるのだった。
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