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4章

32・旦那さまにたくさん聞いて欲しいです

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 セルディはエレファナを抱いたまま、すぐ寝れるようにと部屋まで連れていく。

 エレファナは先ほどより目が覚めてきたのか、いつも通り寝台にもぐりこんだが横にはならずに座ると、眠気と戦うようにぱちぱちと瞬きをした。

(セルディさまは私に、自分の好きなように過ごして欲しいと言っていました。きっと喜んでくれると思います。また笑ってくれるでしょうか?)

 そうわくわくしながら、エレファナが今日の出来事について身振り手振りをくわえながら話すと、セルディも楽しそうに相槌を打ってくれる。

「本当に、カミラが君たちの会話に加わったのか?」

「にこにこしていました」

「信じられないが……そうか。君といて俺の心境も変化したように、カミラはなにか感じたのかもしれないな」

「そうなのでしょうか? カミラさんはなぞなぞが好きなようです。次に会うときは私にぴったりななにかを用意してくれると言っていました。それに帰る間際も『誤解していたことがわかった』『踏み出すきっかけをもらえた』と笑ってくれましたが、私にはなんのことかさっぱりわかりませんでした」

「あぁ……その様子を聞くと、カミラはバートと仲直りでもしたのかもしれないな」

「? カミラさん、バートとケンカをしていたのですか?」

「バートははぐらかすから、俺も詳しくは知らないが……あいつはカミラにこだわっている節があったからな。それがあるときを境に急によそよそしくなって、しつこくし過ぎて嫌われたのだと思っていたよ」

「そうだったのですね。確かにバートも嬉しそうでした。だから私も嬉しかったです。はじめはセルディさまから自分の好きなように過ごすことを教えていただいたので挑戦したのですが、本当に楽しい一日になりました!」

 どこか得意げに胸を張っているエレファナだったが、セルディの方はなにか考え込んでいる。

(あら? セルディさまは笑うというより、少し悩んでいるように見えます……。でも私には秘策がありますから! しかしまだ気づいてもらえていないようです。これは様子を見ているより、こちらから切り出したほうがいいのでしょうか? しかしいつ? やはり今でしょうか!)

「……なぁエレファナ」

「はっ! はい!」

「離れの館に運ばれていた大量の品をすべて、君が魔導で馬車に戻したというのは本当なのか? 荷はカミラが雇った護衛たちと共に、数人がかりで運んだものだろう。俺は魔導の使い過ぎによる、君の体調が気になるのだが……」

「それなら平気です。一日でも一年でも使い続けられるくらい手軽な魔導です!」

「い、一年……?」

 セルディが明らかに戸惑っているので、エレファナはきょとんとした。

「一年では足りないのでしょうか? それなら十年に挑戦してみます! できます!!」

「い……いやいい違う。魔導を使うのはもう十分だからな、頼む」

(頼まれてしまいました)

「俺はただ、君が健やかにのびのびと暮らしてくれるのなら、それだけで十分という気がしているんだ」

 セルディはエレファナを案じるように、静かに頷く。

(どうやらセルディさまは、私が魔導を使うことを気にしているように見えますが……あっ、わかりました!)





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