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1章 奇跡の魔法
6話 新しい居場所
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「ミディ、みんなが帰ってくるまで一緒にケーキ」
「ゼノン、ミディもうお外に出られないの?」
あんな騒ぎを起こしたのだ。外に出れなくなっても仕方がない事なのかもしれない。
それでも、外に出たいと思ってしまう。
「あの国付近には暫く近づかねぇ方が良いだろうな。けど、あそこだけが外ってわけじゃねぇんだ。そこまで気にする必要はねぜだろ」
「うん。でも、ミディはあそこ以外知らないの。ゼノン、教えてくれる?」
ミディリシェルが頼むとゼノンが世界地図を出してきた。
「これが今の地上の地図だ」
「地上?ココモ地上ジャナイノ?」
予想外の言葉に、カタコトで返した。
「ああ。御子の為の世界。天の箱庭って言えば分かるか?」
「ふぇ⁉︎それってあの」
ミディリシェルが驚いて窓を探し出した。
だが、窓から見える景色は普通の花畑だ。
「窓を見ても分かんねぇよ。ここは世界とは隔離されてるからな」
「隔離?どうやって行き来すれば良いの?」
「転移魔法」
「使えない」
「魔法具でも良い。出入り口のゲートがあるから知ってさえいれば簡単に行き来できる」
「魔法具も持ってないよ。転移魔法系の魔法具は高いから手に取れないの」
婚約発表の会場でミディリシェルが見せた魔法具の複製。その魔法を使うにはその手で触れなければならない。
転移魔法の魔法具がどのようなものなのか。形、構造、原理を知っていたとしてもそれだけでは複製はできない。
「便利そうに見えて意外と不便なんだな」
「うん」
「俺も今は転移魔法具持ってねぇんだよな。魔法具の代わりに魔法を教えてやろうか」
「良いの?ありがと。すっごく嬉しい」
嬉しさのあまりミディリシェルはゼノンに抱きついた。
「……これ良いな」
「にゃ?そういえば、どうしてミディをここに連れてきたのか教えてよ」
「俺が頼んだんだ。誰かに愛されたいって」
「……そんなのお金で買えるよ。なんてちょっと前だと言ってたかも。あそこではそうだったから」
本の復元と写本をする代わりにミディリシェルは愛する筈の婚約者をもらった。ゼノン達と出会う前の彼女は金を稼ぐ代わりに愛情や薬を貰えると思っていた。
今回の件はそれが偽りだと気づかせるきっかけとなっていた。
ミディリシェルはゼノンに抱きついたまま顔を動かし、すりすりして楽しんでいた。
金では買えない本物がここにはあるのだと実感したくて。
「今はどうなんだ?」
「ミディの本当のおにぃちゃんは何もしなくても愛してくれるの。ただそこにいるだけで。違う?」
「違わねぇよ」
今まで知らなかったが、側にいるのと言葉にされるのでは嬉しさが違うようだ。
たとえそれが直接言うわけではない。そっけない一言だとしても、言葉にされるだけでより一層嬉しさが増した。
「嬉しい」
「嬉しいのは分かるが、そろそろみんな帰ってくる。こんな所見られたら」
「ミディは良いよ?兄妹なんだから良いでしょ?仲良いねって思われるだけだと思うよ?」
ゼノンから離れたくないミディリシェルはすらすらと言い訳を並べた。
言い訳でミディリシェルが離れたくない事を察したのか、ゼノンは仕方がないという顔をしている。
「離さないの?」
「兄妹だから誤解なんてねぇだろ」
「うん」
「ミディの部屋に誰も入ってこれねぇように結界魔法でも使っとくか」
「ゼノン、ミディ眠い。昨日徹夜してたから。寝たい」
「一緒に寝るか?」
「うん」
ミディリシェルはゼノンと一緒にベッドまで移動した。
「ゼノン、ミディここにいても良いんだよね?」
「当然だ。そんな事考えずに寝ろ」
「うん」
ゼノンと手を繋ぎミディリシェルは眠った。
今度は寝たふりなど考えずに。
寝ている間に寝相が悪くて抱きつくのはセーフだろうとは少しだけ考えたが、寝ている間にそんな事はできない。
それに今は眠くて長々と考えていたくなかった。
「ゼノン、ミディもうお外に出られないの?」
あんな騒ぎを起こしたのだ。外に出れなくなっても仕方がない事なのかもしれない。
それでも、外に出たいと思ってしまう。
「あの国付近には暫く近づかねぇ方が良いだろうな。けど、あそこだけが外ってわけじゃねぇんだ。そこまで気にする必要はねぜだろ」
「うん。でも、ミディはあそこ以外知らないの。ゼノン、教えてくれる?」
ミディリシェルが頼むとゼノンが世界地図を出してきた。
「これが今の地上の地図だ」
「地上?ココモ地上ジャナイノ?」
予想外の言葉に、カタコトで返した。
「ああ。御子の為の世界。天の箱庭って言えば分かるか?」
「ふぇ⁉︎それってあの」
ミディリシェルが驚いて窓を探し出した。
だが、窓から見える景色は普通の花畑だ。
「窓を見ても分かんねぇよ。ここは世界とは隔離されてるからな」
「隔離?どうやって行き来すれば良いの?」
「転移魔法」
「使えない」
「魔法具でも良い。出入り口のゲートがあるから知ってさえいれば簡単に行き来できる」
「魔法具も持ってないよ。転移魔法系の魔法具は高いから手に取れないの」
婚約発表の会場でミディリシェルが見せた魔法具の複製。その魔法を使うにはその手で触れなければならない。
転移魔法の魔法具がどのようなものなのか。形、構造、原理を知っていたとしてもそれだけでは複製はできない。
「便利そうに見えて意外と不便なんだな」
「うん」
「俺も今は転移魔法具持ってねぇんだよな。魔法具の代わりに魔法を教えてやろうか」
「良いの?ありがと。すっごく嬉しい」
嬉しさのあまりミディリシェルはゼノンに抱きついた。
「……これ良いな」
「にゃ?そういえば、どうしてミディをここに連れてきたのか教えてよ」
「俺が頼んだんだ。誰かに愛されたいって」
「……そんなのお金で買えるよ。なんてちょっと前だと言ってたかも。あそこではそうだったから」
本の復元と写本をする代わりにミディリシェルは愛する筈の婚約者をもらった。ゼノン達と出会う前の彼女は金を稼ぐ代わりに愛情や薬を貰えると思っていた。
今回の件はそれが偽りだと気づかせるきっかけとなっていた。
ミディリシェルはゼノンに抱きついたまま顔を動かし、すりすりして楽しんでいた。
金では買えない本物がここにはあるのだと実感したくて。
「今はどうなんだ?」
「ミディの本当のおにぃちゃんは何もしなくても愛してくれるの。ただそこにいるだけで。違う?」
「違わねぇよ」
今まで知らなかったが、側にいるのと言葉にされるのでは嬉しさが違うようだ。
たとえそれが直接言うわけではない。そっけない一言だとしても、言葉にされるだけでより一層嬉しさが増した。
「嬉しい」
「嬉しいのは分かるが、そろそろみんな帰ってくる。こんな所見られたら」
「ミディは良いよ?兄妹なんだから良いでしょ?仲良いねって思われるだけだと思うよ?」
ゼノンから離れたくないミディリシェルはすらすらと言い訳を並べた。
言い訳でミディリシェルが離れたくない事を察したのか、ゼノンは仕方がないという顔をしている。
「離さないの?」
「兄妹だから誤解なんてねぇだろ」
「うん」
「ミディの部屋に誰も入ってこれねぇように結界魔法でも使っとくか」
「ゼノン、ミディ眠い。昨日徹夜してたから。寝たい」
「一緒に寝るか?」
「うん」
ミディリシェルはゼノンと一緒にベッドまで移動した。
「ゼノン、ミディここにいても良いんだよね?」
「当然だ。そんな事考えずに寝ろ」
「うん」
ゼノンと手を繋ぎミディリシェルは眠った。
今度は寝たふりなど考えずに。
寝ている間に寝相が悪くて抱きつくのはセーフだろうとは少しだけ考えたが、寝ている間にそんな事はできない。
それに今は眠くて長々と考えていたくなかった。
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