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第四章 白魔導師の日々
森の白ウサギ精霊
「ドレイク様・・・」
泣いている所を見られてしまった。フロルは、すぐに涙を拭い、慌てて立ち上がる。
「な、泣いてなんていませんよ」
無理に笑顔を浮かべ、明るい声を作った。この強面の竜騎士団長の前で、めそめそ泣くなんてあり得ない。どうせ、泣くなど弱い者のすることだと一蹴されるの決まっている。
ドレイクは黙ったまま、グレイを竜舎の入り口付近につなぐ。どうして、竜舎の中に戻さないのかとフロルが不思議そうな顔をしていると、ドレイクがフロルの傍へと歩み寄った。
「・・・無理しなくていい。あの偽女神のことは色々と耳に入っている」
ぶっきらぼうで、無愛想なドレイクが、まっすぐにフロルの目を見つめた。彼は彼なりに、何か心を痛めている様子だったが、それがどうしてなのか、フロルには見当もつかない。
「じゃあ、私はそろそろこれで・・・」
竜舎を出来るだけ早く出なければと思う。そうでなければ、また涙が溢れそうだ。
「待て」
ドレイクがフロルを呼び止める。竜舎の入り口付近で立ち止まり、振り返ったフロルの腕をドレイクが掴む。
「一緒に来い」
それが、命令であることには間違いない。ドレイクはカリスマ性の高い武将の一人なのだ。
否とはいなせない口調のドレイクに逆らえる者がいるのだろうか。それほど、彼は強く、意志が強い。
ギル様と引き離されそうになって心が折れそうなフロルが、そんな男に逆らえるはずがないのだ。
ドレイクはフロルを自分の愛竜グレイにさっさと乗せ、あっと言う間に空へと飛び立ってしまった。
「ドレイク様、どこへ行くんですか?」
不思議そうな顔をするフロルに、ドレイクは一切答えない。沈黙を貫くドレイクの彫りの深い彼の顔を見ながら、フロルは仕方なく大人しくしているより他にない。上空高い所にいるのだ。他に行きようもないだろう。
それに、フロルは、すっかりと気落ちしていて、抗う気力も残っていない。ギル様と一緒にいられないのは、それほどフロルにこたえたのだ。
そうして、しばらく飛んだ後、森の中に少し開けた場所が見えた。ドレイクは、そこに降り立ち、無言でグレイを木の幹へとつなぐ。
グレイもよく馴染んだ場所のようで、その側でさらさらと流れる小川により、ごくごくと水を美味しそうに飲んでいた。
「わあ、綺麗・・・」
フロルは、気落ちしていてことをすっかり忘れて、目を丸くして周囲に見入っていた。そこには、純白の小花がそこかしこに生えていて。とても綺麗な場所だった。森の木々の間から赤い夕日が差し込んでいる。
「・・・私が疲れた時、たまにここに来る。静かで気持ちのよい場所だ」
もしかして、慰めてくれるために、ここに連れてきてくれたのだろうか。
ドレイクは言葉少なに語る。疲れた時、心が折れそうになった時、美しい景色は人の心を慰めてくれるのだと。
「私も今日は長い一日だったからな」
ドレイクはそう言うと、さっさと一本の木陰を選びんで、グレイの横で長い足を地面に投げ出し、竜にもたれかけながら腕を組む。そうして、さっさと目をつぶり、眠り込んでしまった。
ドレイク様もかなり疲れているようだ。フロルは仕方なく、静かに白い花の間にぺたりと座り込んだ。辺りを見渡せば、小さな白い花はとても綺麗で、すごくいい香りがする。
この場所は、なんて静かで気持ちが落ち着くんだろう。
花を一輪摘み取り、目をつぶって匂いを嗅ぐと、甘いような、優しい匂いがする。
風がさわさわと頬を撫で、木々の葉がサラサラと優しい音を立てる。少し向こうのほうでは、清流がさらさらと爽やかな音を立てて流れていた。
ドレイク様は軽く寝息を立てて眠っているようだ。ここは、つかの間の休息、しばしの憩いを取るのに、絶好の場所だ。
フロルも、その場に静かに座りこんで、ぼんやりしながら、うっとりとその静けさに身を任せていた。
確かに、ここは素晴らしい場所だった。静かで、落ち着くし、何より自然の音がゆっくりと心の傷を癒やしてくれる。きっとここは、ドレイク様にとってもつかの間の休息を得るためのとっておきの場所なのだろう。
何も言わずに連れてきてくれて、そっと放置してくれる。どんなに言葉を尽くして慰められるより、ここは遙かに有効だった。
フロルは、ドレイクに感謝の視線を向けたが、軽く寝息を立て始めたドレイクは関係ないような顔をしていた。
(ありがとう。ドレイク様)
フロルは、心の中で礼をいった。この人は、ぶっきらぼうで強面で、言葉が足りないが、それでも、勇敢な顔の下には、こんなに優しい表情があるのだ。
それから、フロルはうっとりと花畑の中に座り込んでいたが、それから、しばらくしてすぐのこと。
森の木陰に何か白いものがちらと見える。
(あれはなんだろう・・・?)
そこには、一匹の白ウサギがいた。小さなウサギは立ち上がって、こっちの様子を窺っている。鼻をぴくぴくさせて、一生懸命に自分の匂いを嗅ぎ取ろうとしていた。
フロルは音を立ててウサギを怖がらせないようにじっとしていた。
そうしていると、ウサギは少しずつ、自分のほうへと近づいてくる。
「それは魔獣だが、全く無害だ。心配ない」
眠っていたはずのドレイクが目をうっすらと開けて、フロルに言う。
「ここにいると、グレイが珍しいのか、時折、様子を見に来る」
ドレイクはそういうと再び、うとうとと眠りこんでしまった。
しばらくして、フロルの周りをうろうろしていたウサギは、ぴょんぴょんと近寄ってきてフロルの膝の上にのった。真っ白で、もふもふの小さなウサギだ。
ウサギはフロルの膝の上でひくひくと鼻を動かしながら、自分の顔を伺っている。
「ふふ・・・可愛いな」
ドレイク様は当然、この魔獣のことも知っているのだ。知っているからこそ、ここに連れてきてくれたのだろう。
フロルはウサギの耳の下を掻いてやるとウットリとした様子でじっとしている。丸くて、白くて、もふもふで。
ふにゃりとフロルの口元に笑みが浮かぶ。
「ああ、白いのは、モフモフは、可愛いのは、癒やしだ~」
思わずウサギを抱き上げ、ほんわりした背中にほおずりをする。ウサギも、嫌がってはおらず、むしろ嬉しそうな様子。
「ああ、かわいい!」
なんて可愛いの!と、フロルがウサギに頬ずりをしていて、ふと違和感を感じて目をあげる。
「ええっ?えええっ?」
さらに数匹のウサギが姿を現していた。さらに森の奥へと目を向けると、もっと沢山のウサギの大群が・・・
その十数分後、フロルの周りには、白ももふもふのウサギが群がり、じっと愛くるしい目で自分を見つめている。
周りは真っ白のもふもふだらけだ。お行儀よく両手をついて、うさぎたちはフロルをじっと見上げていた。
そして、フロルの膝の上に乗っているウサギの数がどんどんと増える。そして、それは肩にのり、フロルの頭の上にのり。気がつけば、真っ白なウサギのもふもふにフロルはすっぽりと包まれていた。
「いやあ、かわいい・・・もふもふ・・・ふふふ・・・・」
フロルは嬉しくなって、思わず怪しい笑いを漏らす。
フロルの頭に乗っているウサギ、膝に乗っているウサギは可愛い鳴き声を上げていたが、その意味をフロルはしらない。
うさぎたちは、こう言っていたのだ。
(めがみさま、ないてる・・・)
(めがみさま、かわいそう・・・)
(そうだ!ほかのみんなもよんで、めがみさま、なぐさめるの)
(ないてるめがみさまに、わらってもらうの)
(みんなきてー)
(めがみさま、いるよー)
もふもふ、もふもふ・・・ウサギたちは、どんどんと数を増やし、フロルの周りに集まっていった。
◇
(*注:実際の野生生物は、寄生虫などがおり、直接触れることは感染症につながりますので、危険ですから、絶対触れないでください。詳しくは、近況報告にて。
泣いている所を見られてしまった。フロルは、すぐに涙を拭い、慌てて立ち上がる。
「な、泣いてなんていませんよ」
無理に笑顔を浮かべ、明るい声を作った。この強面の竜騎士団長の前で、めそめそ泣くなんてあり得ない。どうせ、泣くなど弱い者のすることだと一蹴されるの決まっている。
ドレイクは黙ったまま、グレイを竜舎の入り口付近につなぐ。どうして、竜舎の中に戻さないのかとフロルが不思議そうな顔をしていると、ドレイクがフロルの傍へと歩み寄った。
「・・・無理しなくていい。あの偽女神のことは色々と耳に入っている」
ぶっきらぼうで、無愛想なドレイクが、まっすぐにフロルの目を見つめた。彼は彼なりに、何か心を痛めている様子だったが、それがどうしてなのか、フロルには見当もつかない。
「じゃあ、私はそろそろこれで・・・」
竜舎を出来るだけ早く出なければと思う。そうでなければ、また涙が溢れそうだ。
「待て」
ドレイクがフロルを呼び止める。竜舎の入り口付近で立ち止まり、振り返ったフロルの腕をドレイクが掴む。
「一緒に来い」
それが、命令であることには間違いない。ドレイクはカリスマ性の高い武将の一人なのだ。
否とはいなせない口調のドレイクに逆らえる者がいるのだろうか。それほど、彼は強く、意志が強い。
ギル様と引き離されそうになって心が折れそうなフロルが、そんな男に逆らえるはずがないのだ。
ドレイクはフロルを自分の愛竜グレイにさっさと乗せ、あっと言う間に空へと飛び立ってしまった。
「ドレイク様、どこへ行くんですか?」
不思議そうな顔をするフロルに、ドレイクは一切答えない。沈黙を貫くドレイクの彫りの深い彼の顔を見ながら、フロルは仕方なく大人しくしているより他にない。上空高い所にいるのだ。他に行きようもないだろう。
それに、フロルは、すっかりと気落ちしていて、抗う気力も残っていない。ギル様と一緒にいられないのは、それほどフロルにこたえたのだ。
そうして、しばらく飛んだ後、森の中に少し開けた場所が見えた。ドレイクは、そこに降り立ち、無言でグレイを木の幹へとつなぐ。
グレイもよく馴染んだ場所のようで、その側でさらさらと流れる小川により、ごくごくと水を美味しそうに飲んでいた。
「わあ、綺麗・・・」
フロルは、気落ちしていてことをすっかり忘れて、目を丸くして周囲に見入っていた。そこには、純白の小花がそこかしこに生えていて。とても綺麗な場所だった。森の木々の間から赤い夕日が差し込んでいる。
「・・・私が疲れた時、たまにここに来る。静かで気持ちのよい場所だ」
もしかして、慰めてくれるために、ここに連れてきてくれたのだろうか。
ドレイクは言葉少なに語る。疲れた時、心が折れそうになった時、美しい景色は人の心を慰めてくれるのだと。
「私も今日は長い一日だったからな」
ドレイクはそう言うと、さっさと一本の木陰を選びんで、グレイの横で長い足を地面に投げ出し、竜にもたれかけながら腕を組む。そうして、さっさと目をつぶり、眠り込んでしまった。
ドレイク様もかなり疲れているようだ。フロルは仕方なく、静かに白い花の間にぺたりと座り込んだ。辺りを見渡せば、小さな白い花はとても綺麗で、すごくいい香りがする。
この場所は、なんて静かで気持ちが落ち着くんだろう。
花を一輪摘み取り、目をつぶって匂いを嗅ぐと、甘いような、優しい匂いがする。
風がさわさわと頬を撫で、木々の葉がサラサラと優しい音を立てる。少し向こうのほうでは、清流がさらさらと爽やかな音を立てて流れていた。
ドレイク様は軽く寝息を立てて眠っているようだ。ここは、つかの間の休息、しばしの憩いを取るのに、絶好の場所だ。
フロルも、その場に静かに座りこんで、ぼんやりしながら、うっとりとその静けさに身を任せていた。
確かに、ここは素晴らしい場所だった。静かで、落ち着くし、何より自然の音がゆっくりと心の傷を癒やしてくれる。きっとここは、ドレイク様にとってもつかの間の休息を得るためのとっておきの場所なのだろう。
何も言わずに連れてきてくれて、そっと放置してくれる。どんなに言葉を尽くして慰められるより、ここは遙かに有効だった。
フロルは、ドレイクに感謝の視線を向けたが、軽く寝息を立て始めたドレイクは関係ないような顔をしていた。
(ありがとう。ドレイク様)
フロルは、心の中で礼をいった。この人は、ぶっきらぼうで強面で、言葉が足りないが、それでも、勇敢な顔の下には、こんなに優しい表情があるのだ。
それから、フロルはうっとりと花畑の中に座り込んでいたが、それから、しばらくしてすぐのこと。
森の木陰に何か白いものがちらと見える。
(あれはなんだろう・・・?)
そこには、一匹の白ウサギがいた。小さなウサギは立ち上がって、こっちの様子を窺っている。鼻をぴくぴくさせて、一生懸命に自分の匂いを嗅ぎ取ろうとしていた。
フロルは音を立ててウサギを怖がらせないようにじっとしていた。
そうしていると、ウサギは少しずつ、自分のほうへと近づいてくる。
「それは魔獣だが、全く無害だ。心配ない」
眠っていたはずのドレイクが目をうっすらと開けて、フロルに言う。
「ここにいると、グレイが珍しいのか、時折、様子を見に来る」
ドレイクはそういうと再び、うとうとと眠りこんでしまった。
しばらくして、フロルの周りをうろうろしていたウサギは、ぴょんぴょんと近寄ってきてフロルの膝の上にのった。真っ白で、もふもふの小さなウサギだ。
ウサギはフロルの膝の上でひくひくと鼻を動かしながら、自分の顔を伺っている。
「ふふ・・・可愛いな」
ドレイク様は当然、この魔獣のことも知っているのだ。知っているからこそ、ここに連れてきてくれたのだろう。
フロルはウサギの耳の下を掻いてやるとウットリとした様子でじっとしている。丸くて、白くて、もふもふで。
ふにゃりとフロルの口元に笑みが浮かぶ。
「ああ、白いのは、モフモフは、可愛いのは、癒やしだ~」
思わずウサギを抱き上げ、ほんわりした背中にほおずりをする。ウサギも、嫌がってはおらず、むしろ嬉しそうな様子。
「ああ、かわいい!」
なんて可愛いの!と、フロルがウサギに頬ずりをしていて、ふと違和感を感じて目をあげる。
「ええっ?えええっ?」
さらに数匹のウサギが姿を現していた。さらに森の奥へと目を向けると、もっと沢山のウサギの大群が・・・
その十数分後、フロルの周りには、白ももふもふのウサギが群がり、じっと愛くるしい目で自分を見つめている。
周りは真っ白のもふもふだらけだ。お行儀よく両手をついて、うさぎたちはフロルをじっと見上げていた。
そして、フロルの膝の上に乗っているウサギの数がどんどんと増える。そして、それは肩にのり、フロルの頭の上にのり。気がつけば、真っ白なウサギのもふもふにフロルはすっぽりと包まれていた。
「いやあ、かわいい・・・もふもふ・・・ふふふ・・・・」
フロルは嬉しくなって、思わず怪しい笑いを漏らす。
フロルの頭に乗っているウサギ、膝に乗っているウサギは可愛い鳴き声を上げていたが、その意味をフロルはしらない。
うさぎたちは、こう言っていたのだ。
(めがみさま、ないてる・・・)
(めがみさま、かわいそう・・・)
(そうだ!ほかのみんなもよんで、めがみさま、なぐさめるの)
(ないてるめがみさまに、わらってもらうの)
(みんなきてー)
(めがみさま、いるよー)
もふもふ、もふもふ・・・ウサギたちは、どんどんと数を増やし、フロルの周りに集まっていった。
◇
(*注:実際の野生生物は、寄生虫などがおり、直接触れることは感染症につながりますので、危険ですから、絶対触れないでください。詳しくは、近況報告にて。
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