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眠れなくて

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寝台で休んでいたウィルフレッドだったが、中々寝付けず、皆が寝静まった頃に庭に出た。今日は綺麗な満月だった。真っ暗な庭が月夜に照らされてほんのり明るい。

ゆっくり地面に腰を下ろすと、そのまま芝生に仰向けになった。静かな時間が流れていく。夜風が頬に当たり心地よく、木々がサワサワと揺れる音がした。どれくらいそうしていたのだろう。人が近付く気配に全く気が付かなかった。視界にふわっと銀色が現れる。


「!?」

「ごめんなさい。邪魔したかしら?」


顔を覗き込んできたレティシアに驚き体を起こす。レティシアはウィルフレッドに並ぶように静かに腰をおろす。


「こんな時間にこんなところでどうしたの?」

「あぁ・・・なんか、寝付けなくてな・・・」

「そう・・・」

「レティシア嬢こそ、こんな時間に女性が一人で出てきては危ないぞ?」

「ここは私の屋敷よ?」

「それでもだ・・・今は殿下や王都の騎士達も滞在している。何が起こるかわからない」

「心配してくれるのね」


ウィルフレッドがレティシアを見ると、その表情は笑顔だった。


「君が笑っているのを初めて見た気がするな」

「そう?まぁ、そうかもしれないわね。あなたには厳しい事ばかり言ったものね」


ふふっと笑うレティシアに、ウィルフレッドは胸が温かくなると同時に、奥にチクリと痛みを感じた。


「・・・明日、王都に向けてここを出る」

「そのようね」

「世話になった」

「特に何もしてないわ」


言葉に詰まるも、言わなければならない事があると、ウィルフレッドは意を決してレティシアに体ごと向き直る。


「半年前の夜会では本当に助かった」

「何の事かしら」

「・・・なかった事にと、また言うのか?」

「それでいいじゃない・・・時間が経てば忘れるわ」


レティシアの言葉にウィルフレッドは俯く。しかし自分の意志だけは伝えたいウィルフレッドは必死に言葉を探す。


「忘れるなどできない・・・君の事が、頭から離れない」

「トラウマになったの?」

「違う」

「ふぅん、じゃあ、続きがしたいの?」

「そんなんじゃない!」


ウィルフレッドは気付けばレティシアの肩を掴んでいた。







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次回

もどかしくて、切なくて、苦しくて・・・辛い



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