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忘れるなんてできない
しおりを挟む月夜の下で話をしていたウィルフレッドとレティシア。半年前に、夜会で媚薬を盛られたウィルフレッドを助けた事を、時間が経てば忘れるからなかった事にすればいいと言った。
「忘れるなどできない・・・君の事が、頭から離れない」
「トラウマになったの?」
「違う」
「ふぅん、じゃあ、続きがしたいの?」
「そんなんじゃない!」
ウィルフレッドは気付けばレティシアの肩を掴んでいた。
「あ、悪い・・・」
ウィルフレッドはつい掴んでしまったレティシアの肩から手を離す。
「そんなんじゃないんだ・・・あの時は意識が朦朧としていたから、君の銀の髪と紫の瞳だけが鮮明に焼きついただけだった。でも、後から名前も聞いていなかった事に気付いて・・・毎日君の事を想っていた。この辺境への視察の同行も副騎士団長に代わってもらって・・・もう一度君に会いたくて・・・」
「こんなところまで私を追いかけてこなくても、貴方ほどの人なら引く手数多でしょうに」
「女には興味がなかった。君に出会うまでは・・・こんな気持ち初めてなんだ。もどかしくて、切なくて、苦しくて・・・辛い」
「辛い・・・か・・・」
「俺は半年も前に君を見つけた。会いたくてここへ来た。でもヴィンセント殿下は違う。まさか殿下まで君を気にいるなんて・・・思わなかった」
ウィルフレッドは苦しげな表情で下を向いた。
「君にどんどんアプローチしていく殿下が羨ましかった。殿下は全てを持っている。勝てる相手じゃないのはわかっている。でも・・・君だけは渡したくない」
「私はあなたのものじゃないわ」
「わかってる・・・でも、誰にも渡したくない。諦め切れる気がしない」
ウィルフレッドは、月夜の光に照らされたレティシアの紫の瞳をじっと見つめる。
「君は・・・殿下の事をどう思ってる?」
「どうって・・・どうとも思ってないわ。随分と自信家ねとは思ってるけど」
「じゃあ、俺の事は・・・」
「特に何も。毎日欠かさず鍛錬をする真面目な人ねとは思ってる」
「特に何も・・・か」
ウィルフレッドは、ドサッと地面に体を投げ出した。
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次回
君という人は、もう俺の心に住み着いているんだ
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