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デレる騎士団長
しおりを挟む「団長、おはようございます」
「あぁ、おはよう」
「何かいい事があったのですか?」
「えっ?・・・あぁ・・・顔に出ていたのか?」
「えぇ、かなり。にやけておいででしたよ」
「そ、そうか・・・なぁ、聞いてくれるか?」
「なんでしょう?」
「ふっふっふっ、婚約者になったシアに、行ってらっしゃいのキスをして貰ったんだ」
「そ、そうですか、それはよかったですね」
「朝から最高の気分だ」
ウィルフレッドは皆に惚気まくっていた。夜会に参加した全員が見ていた大暴露逆プロポーズ。翌日には王都中に広まっていた。あの夜会で二人が相思相愛であることは周知の事実となったが、レティシアの美しさと意志の強い凛とした姿が、かなりの令息のハートを射止めてしまったのも事実。そして夜会でレティシアに選んで貰ったことが嬉しくて、ボロボロ泣いてしまったウィルフレッドを見て、密かな恋を諦めた令嬢も多かった。一年もの間、毎日手紙を送り続け、彼女に振り向いて欲しいと必死だった事を大暴露されたウィルフレッドだったが、ロマンチックな話と王都中の令嬢達が羨ましがった。
婚約者がいない事で人気が集中しそうなものだが、何故か女性支持が減った第一王子ヴィンセント。残念王子と呼ばれているらしい。
騎士達に稽古をつけていると、少し離れたところに人だかりができていた。最初は、いつものごとく騎士達を見に来た令嬢がいて、皆が群がっているのだろうと思っていた。しかし、ウィルフレッドは見てしまった。騎士達に囲まれていたのは、待ち望んでいた愛しい婚約者レティシアだった。
ウィルフレッドは物凄い勢いで走り出すと、人だかりの直前で、持っていた模擬刀を地面に刺し、その勢いで宙に舞い、着地と同時にレティシアを抱き込んだ。
「きゃぁっ!?・・・うっ・・・ちょっと、ウィル、普通に登場してくれる?」
ウィルフレッドは、なんと人垣を飛び越えたのだ。
「ウィル?」
ウィルフレッドはレティシアの肩に頭を乗せているが、何も答えない。怒られているからではない。ただ・・・ただ震えていたのだ。
「ウィル、どうしたの?」
「・・・怖い」
「怒ったつもりじゃなかったんだけど?」
「違う・・・」
「じゃあ、どうしたの?」
「・・・男に囲まれたシアを見て、血の気が引いた」
「もう・・・そんなに怯えないで」
この一部始終を目の前で見ていた騎士達は、信じられないものを見たと唖然としていた。いつもは厳しい騎士団長。辺境から戻ると、稽古もより一層厳しくなった。今、目の前で女性に抱きつき震えているのを慰めて貰っているのは一体誰なんだと。
「騎士の皆様、驚かせてしまってごめんなさいね」
ウィルフレッドの頭を撫でながらレティシアが言う。
「ウィル、お昼にしましょう?あっちの中庭に行ってみたいんだけど」
「中庭?」
ウィルフレッドはおずおずと顔を上げる。
「膝枕して貰いたいんでしょう?」
レティシアの手には、ランチの入ったバスケットと敷物が見える。ウィルフレッドはレティシアを抱きかかえた。
「ちょ、ちょっとウィル!?」
そのまま歩き出し、騎士達は放置し足早に去って行った。その間にも、すれ違う騎士達が、何事かと思うほどウィルフレッドはご機嫌だった。
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次回
【ウィルフレッドside】
焦ったんだ
シアが取られる
シアが俺の元からいなくなるって
応援ありがとうございます!
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