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【ウィルフレッドside】惚気後の恐怖

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「何かいい事があったのですか?」





部下にそう言われて気が付いた





「えっ?・・・あぁ・・・顔に出ていたのか?」





顔に出ていたのだろうか
嬉しさが込み上げて来て自然に緩んでいたのかもしれない
騎士団の職務中にそんなに気が緩む事などなかったのに・・・





「えぇ、かなり。にやけておいででしたよ」






にやけて・・・
他人に対してだらしのない男だなんて思っていたが、まさか自身がそうなるとは思いもしなかったな・・・
シアに格好いい、惚れたなど言われたのが余程に俺は嬉しいらしい





「そ、そうか・・・なぁ、聞いてくれるか?」

「なんでしょう?」

「ふっふっふっ、婚約者になったシアに、行ってらっしゃいのキスをして貰ったんだ」

「そ、そうですか、それはよかったですね」

「朝から最高の気分だ」





あぁ、本当に最高の気分だ
これから毎日この幸せが訪れる





何人もの騎士達に惚気てしまっていたらしい
皆からニヤニヤとした視線を感じる
お前達がどんな目で見ようが、俺にはシアがいて、今、幸せなんだ


夜会で、まさかあんな展開になるとは思いもしなかった
シアは俺を選んだ
一国の王子、しかも第一王子のヴィンセント殿下ではなく俺を
ヴィンセント殿下はいずれ立太子され、王太子になられる
ゆくゆくは国王に・・・
シアは殿下を選べば、自分は王妃になれる未来があった
国で一番の女性になれたのだ


沢山の令嬢達がその地位を虎視眈々と狙っている
彼女の姉、マリーリア嬢もその地位を望んでいた
いや、ヴィンセント殿下本人を望んでいたのかもしれないが
今となってはどうでもよい
なんだかんだ言っても、今はアルバート殿下と仲睦まじくデートをしている姿が見れるという


しかし、シアの美しさに惹かれた令息達が多かった
夜会で目立ってしまい、その上、殿下に望まれるほどの女性なのだと皆に印象付けてしまった
その上でシアは俺を選んだ
嬉しいの何ものでもないが、その姿に興味を持ったり惹かれた令息達が増えたのも事実だ
熱のこもった目で見ている男が多かった


ますます気が抜けなくなったな・・・


この時の俺は朝の幸せの余韻に浸っていた
絶望に突き落とされるなんて知らずに







ん?なんだ?
人だかりができているな
また騎士達が見学に来たご令嬢でも囲んでいるのだろう・・・


・・・


銀の髪・・・シア・・・


シ、シア!?


俺のシア!何故騎士達に、沢山の男に囲まれてるんだ!


ダメだ!


気付けば全速力で駆け出して、持っていた模擬刀を地面に刺した反動で宙に舞い、人垣を飛び越えていた


そのまま着地してシアを腕の中に捕らえた





「きゃぁっ!?・・・うっ・・・ちょっと、ウィル、普通に登場してくれる?」





シアを驚かせてしまった・・・


でも・・・よかった・・・シアだ・・・





「ウィル?」




シアが呼びかけてくるが言葉が見つからない
震えがおさまらない
戦地に出ても、敵を目の前にしても震えることなんてなかったのに





「ウィル、どうしたの?」

「・・・怖い」




シアを失うのが怖い





「怒ったつもりじゃなかったんだけど?」





怒られて怖いなんて思ってない
違うんだ





「違う・・・」

「じゃあ、どうしたの?」





焦ったんだ
シアが取られる
シアが俺の元からいなくなるって






「・・・男に囲まれたシアを見て、血の気が引いた」

「もう・・・そんなに怯えないで」





騎士達が皆見ている
そんなの構うものか
シアが・・・抱きしめてくれる・・・
頭を撫でてくれている
こんな情けない姿を見せる俺に、呆れもせず優しく慰めてくれている








「騎士の皆様、驚かせてしまってごめんなさいね」





俺の頭を撫でながらシアが騎士達に話しかけている
シアの瞳は今、騎士達に向けられている
それだけで嫉妬してしまいそうだが、俺はシアに抱きしめられて頭を撫でられている
そう、何より俺は特別なのだ
そう思えばそれぐらいはいいかと思えてきた





「ウィル、お昼にしましょう?あっちの中庭に行ってみたいんだけど」

「中庭?」






シアの肩から顔を上げるとシアはにこっと笑いかけてくれる
それだけで俺は心躍った






「膝枕して貰いたいんでしょう?」





ひ、膝枕・・・
シアは俺が手紙に書いた事、たくさんの事を覚えている
そしてそれを叶えようとしてくれる
耐えきれず俺はシアを抱きかかえた





「ちょ、ちょっとウィル!?」





怒っているだろうか?
構うものか
今は少しでも俺が特別なんだと感じたい
俺だけのシア・・・
俺にこんな感情を教えてくれたシア・・・
大好きだ





ーーーーーーーーーーーーーーー


次回

なぁ・・・これって、みんなやってるものなのか?







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