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公爵邸の玄関での攻防
しおりを挟むウィルフレッドは、王宮から屋敷に帰る馬車の中でも膝から降ろしてはくれなかった。そして公爵家に帰り着くも・・・。
「シア、おかえり」
「ウィルもおかえりなさい」
お互いにおかえりを言ってキスをする。
「兄上、お義姉様!おかえりなさい、僕もおかえりなさいのキスをしたいです!」
「お前はダメだ!」
「兄上だけずるいです!」
「お前はお前の相手を見つけてからだ」
「そんなぁ・・・」
しゅんと落ち込むルシアンの頬にあたたかく柔らかいものが触れる。
「ふぁっ!?」
「ただいま」
レティシアが隙をついてルシアンの頬にキスをした。
「お、お、おかえりなさい、お義姉様!!」
ルシアンは、レティシアがキスをした右頬を両手で隠すようにして、顔を真っ赤に染めている。
「シ、シア!?俺の目の前で・・・しあぁぁぁっ!・・・うっ・・・うわぁぁぁ」
「ウィル・・・唇にはしてないわ?」
「でも・・・うっ・・・でも・・・」
「ここへのキスは、ウィルだけよ?」
レティシアは人差し指を立て、そっとウィルフレッドの唇に触れる。
ぱくっ
「えっ?」
レティシアは何が起きたんだと理解するまでに少し時間がかかった。そして驚いた。自身の唇にそっと触れたレティシアの指を口に咥えたのだ。
「ウィル・・・私、食べ物じゃないわ」
ウィルフレッドは、レティシアの人差し指を咥えたまま抱き上げると、何も言わずに自室に向かって歩き出した。ルシアンは、唖然としていた。
「兄上・・・大胆・・・」
ウィルフレッドは自室に着くも、レティシアの指は咥えたまま。
「ウィル、いい加減離してくれないかしら?」
ウィルフレッドは指を咥えたまま、ブンブンと首を横に振って嫌だと表現する。
「夕食であーんして貰いたいんじゃなかったの?このままだとできないわね」
「・・・仕方ない・・・」
やっとレティシアの指は解放された。夕食でひたすらあーんをねだり、ルシアンに加えて公爵までも、私も!と言い出す始末。もう、ウィルフレッドは嫉妬全開で、結局また部屋に引き込まれた。そして今、また駄々を捏ねている。
「別にいいじゃないか!」
「ダメよ」
「うぅぅ・・・一緒に湯あみ・・・したいんだ・・・なぁ、一緒に入ろう?」
「ダメって言ってるでしょう?」
「なんでダメなんだ!」
「ダメなものはダメ」
「タオル巻いて入ればいいんじゃないか?」
「それでもダメ」
「お願いぃぃ!!」
「嫌よ」
小一時間このやり取りがされている。やっとの思いでウィルフレッドの腕から抜け出し、湯あみを済ませたレティシアだが、すぐにウィルフレッドに捕まる。
「シア、いい匂いする・・・」
「ウィルも同じ匂いじゃない」
「クンクン」
「嗅がないで」
「ずっと嗅いでいたい」
「やめて」
寝台の中に入っても、クンクン嗅ぎ続けていたが、ウィルフレッドは寝息を立て始めた。
「ウィル・・・なんだか大型犬でも飼っているみたい・・・ふふっ・・・可愛いわ」
なんだかんだレティシアも楽しんでいた。
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次回
【ウィルフレッドside】
食べ物じゃないが・・・食べてしまいたい
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