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お茶会の誘い
しおりを挟む「なぁ、本当に行くのか?」
「えぇ、もちろん行くわ。せっかくお誘い頂いたんだもの」
「・・・だが・・・そのドレスはダメだ」
「どうしてよ?別にいいじゃない?女だけのお茶会に行くだけなんだから」
レティシアは学園に通っていた頃に親しくなった、侯爵令嬢の屋敷で開かれる茶会に招待されていた。侯爵家当主はこの国の宰相でもある。準備を済ませたレティシアを見送る為、いや引き止める為に部屋を訪れたウィルフレッドだったが、着ているドレスが気になり、それを踏まえてダメだと必死に止めている。レティシアの着ているドレスは、ワインレッドの落ち着いた色のドレスで、特に露出が大き物でもない。自分の色ではないものを身につけて外出しようとしている事が気に入らないのだ。
「こっちにしよう?な、シア?」
「・・・わかったわ。青いドレスを着ればいいのね?」
「あぁ、シアにはこっちが似合う」
「着替えるから出て行って」
「・・・嫌だ」
「ウィル?じゃあ、このまま出かけるわ」
「それは・・・ダメだ」
結局ウィルフレッドは部屋から追い出された。着替えが終わるも、必死に行かないでと引き止めるウィルフレッドの懇願虚しく、レティシアは馬車で出掛けていった。
「レティシア!今日は来てくれて嬉しいわ」
「ミリア、久しぶりね!会えて嬉しいわ」
「この前の夜会、凄かったわね!逆プロポーズ!格好良かったわ・・・今度ゆっくり聞かせて貰うわよ?」
「別にゆっくり話す事もないわよ」
そんなじゃれあいのような会話をしながら、宰相の娘、ミリアが屋敷のサロンに案内する。日当たりのいい場所に造られたサロンには、数人の令嬢達が集まっていた。
「皆様、私の友人のレティシアですわ」
「ベルモンド辺境伯が娘、レティシア・ベルモンドでございます」
レティシアは綺麗なカーテシーと共に挨拶をする。それもそのはず、目の前にいる令嬢達はそうそうたる顔ぶれだった。宰相の娘ミリアをはじめ、公爵家の令嬢であるイザベラ、そして第一王女、ミシェリア。その他にも王都の有力貴族である侯爵家や伯爵家の令嬢もいる。
案内された席につくと、話題はもっぱら夜会でのレティシアによるウィルフレッドへの大暴露逆プロポーズ。そして、第二王子とレティシアの姉であるマリーリアの事。
「それにしても驚きましたわ。アバンス団長様は、ずっと婚約者がいらっしゃらなかったものね」
「中々女性にお心を開かないアバンス団長様でしたのに、どうやってお心を射止めましたの?」
「まさかあの場で涙を流して甘えられるほどだとは思いませんでしたわ!」
令嬢達が次々に話題に出しては質問をしてくる。その様子を王女のミシェリアと公爵令嬢のイザベラは静かに眺めていた。
「それにしても、納得いたしましたわ」
「何にですの?」
一人の令嬢が声を上げる。
「レティシア様の存在があったから、アバンス団長様は女性に靡かなかったのかと。それほど愛していらっしゃったという事ですのね!」
「・・・そう、かもしれませんわね」
元々ウィルフレッドは、一貫して女性に興味のない態度だった。長年婚約者としていたわけでもなく、ここ一年半におきた事だけで変わってしまったのだ。まさか一年も放置していたのに、好きになり、勝手に恋心を増幅させ、こんな事になったなんてレティシアは言えるはずもなく、なんとなく、想い合っているという方向の話になった。
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次回
やっぱりあの銀の蝶は美しいね
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