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紺の刺繍と金の刺繍

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レティシアが公爵邸に住むようになって二週間が経とうとしていた。今夜は夜会があり、ウィルフレッドは騎士団長としてではなく、公爵家の子息としてレティシアをエスコートして参加をする予定だ。そして今、ウィルフレッドが渋っている。


「シア・・・そのドレス・・・」

「このドレス?お義母様が夜会にってくださったの」

「似合ってる・・・似合ってるし・・・俺の色に染まってはいるんだが・・・」


ウィルフレッドの要望で、青いドレスを着るようになったレティシアだが、今回のドレスは公爵夫人である義母のクラウディアが準備したものだ。光沢のある青い生地に、紺色と銀の糸で刺繍がされたもの。


「嬉しいんだが・・・」

「だが、何?」

「シアが綺麗すぎて・・・心配だ」

「じゃあ、着替えてくるわ」

「ダ、ダメだ!」

「えっ?」

「だって・・・着替えたら違う色にするんだろう?」

「だって、これ気に入らないんでしょう?」

「気に入らないとかではないんだが・・・」

「ん・・・じゃあ、青のドレスに金の刺繍が入ったものがあるからそれにするわ」

「ダメだ!それだけは絶対にダメだ!」

「・・・じゃあ、このままでいいわね?」

「あぁ、そのままでいい、そのままがいい!」


レティシアが言った、青い生地に金の刺繍が入ったドレス。それは、金の髪に青い瞳を持つ第一王子ヴィンセントを思わせるドレス。だが、レティシアはそんなドレスは持ち合わせてはいない。案外このドレスが気に入っていて、夜会に着て行きたいのにウィルフレッドが難色を示した。それを着るぐらいならこれでいいと言わせる為に言っただけ。





「うん・・・やっぱり似合っているわ。我ながら・・・独占欲丸出しなデザインに仕上がったわね。どう見ても相思相愛な二人だもの。どこの馬の骨かわからない男に、私の可愛いレティシアちゃんをあげるものですか。レティシアちゃんは私のものよ!」




ちょっと言葉が違うようだが、可愛い嫁を思っての事。どうやら、執着しているのはウィルフレッドだけではないようだ。


「可愛いのはいいけど、男どもが寄ってくるのは困るわね・・・ちゃんとウィルフレッドのものであり、アバンス公爵家の嫁だと認識を持ってもらわないとね。まったく・・・あの子息にも注意が必要ね・・・」


クラウディアは一体何を言っているのか。何を知っているのか。しかしこれだけは言える。息子可愛さではなく、義娘が可愛いだけな事。




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次回

あくまで婚約者だろう?

いくらでも奪い取れるさ


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