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聞き耳を立てる
しおりを挟む応接室を飛び出したウィルフレッドは、急いでレティシアの部屋に向かっていた。レティシアに会いたい。会って早く抱きしめたい。その一心だった。部屋の前に着くと、扉に手をかけた瞬間立ち尽くしてしまう。
「・・・シア・・・」
部屋の中から笑い声が聞こえる。レティシアとルシアンが話しをしているようだった。何を話しているのか。ウィルフレッドは悪いと思いながらも、そのまま聞き耳をたてる。
「凄いわね。そんな難しいことを勉強しているのね」
「当然の事です。僕は兄上みたいに強くはありませんから、騎士にはなれないでしょう。将来はどこかの婿です。役に立てるように今から頑張っておかないといけませんからね」
「ふふっ、ルシアンは努力家なのね。偉いわ」
レティシアに褒められ、ルシアンはほんのり頬を染める。
「お義姉様に褒められると、なんだか本当に凄い事のように思えてきます。父上や母上も誉めてはくれるのですが、お義姉様に褒められるのは格別です!!・・・あぁ・・・悔しいなぁ・・・僕がもっと大人だったなぁ・・・」
「どうしたの?」
「お義姉様をお嫁さんにできたのは僕だったかもしれないと思いまして」
「ふふっ、ルシアン、嬉しいわ」
話を聞き漏らすまいと、聞き耳を立てていたウィルフレッドは焦っていた。年下とはいえ、ルシアンに求婚まがいの事を言われ、レティシアが嬉しいと言う。愛を囁いていいのは自分だけ。そんな気持ちで焦燥感にかられる。今にでも扉を開け、駆け出したい気持ちだった。
「でもね・・・」
話の続きが聞こえ、何とか立ち止まった。レティシアは何を言うのか。
「たとえルシアンが同じ歳だったとしても、惹かれてはいなかったと思うの」
「どうしてです?」
「あなたは優しいもの。ウィルみたいに強引にはなれないわ。ルシアンは王子殿下を敵にまわしてでも、私を追いかけまわせる自信はある?」
「それはちょっと・・・怖いですね」
「ウィルなら迷わないわ。構わず追ってくる。そういう人なの。諦めが悪くて、思い込んだ事にはまっすぐで。自分の欲にも忠実よ?ルシアンにも好きな人ができたらきっとわかるわ」
レティシアが自身をそんな風に思っているのかと心がじんわりと温かくなる。
「何に変えても守りたいと思うのよ。どんなに大変でも、辛くても、それが相手の幸せになるのならって思うの。私はウィルに幸せになって欲しいの、もちろん・・・」
バタン!!
レティシアが話し終わるのが早いか、勢いよく扉が開かれ、言葉がかき消された。
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次回
何故離れようとするんだ!
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