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義姉と義弟のお茶会
しおりを挟む「そうなのですか、兄上にも苦手なものがあったのですね・・・」
「えぇ、そうなの。薬飲むのを抵抗して、一向に飲もうとしないのだもの」
「前から女性は苦手だとか、皆一緒に見えるなんて話は随分と聞かされていましたが、薬が苦手とは・・・僕でも飲めますよ?」
「ふふっ、こればかりはルシアンの方が大人ね」
「兄上に勝てるところがこれとは、格好はつきませんがね」
ウィルフレッドが薬も相まってぐっすりと眠っている間、レティシアは先に目を覚ました。昼過ぎだということもあり、少しお茶でもしようと屋敷の中を進んでいると、ルシアンと遭遇した。偶然彼もお茶をしょうと思っていたという。中庭に面するテラスで二人で向き合って座っていた。会話の中心はウィルフレッドの事だった。話が途切れたところで、レティシアがすっと立ち上がる。
「お義姉様?もう、行かれるんですか?」
レティシアが立ち上がった事で、お茶はお開きになるのだと思った。だが、レティシアはルシアンの側に歩み寄る。ルシアンの頭を優しく撫でると、そのまま胸に包むように抱きしめる。ルシアンは突然の事に驚くも、顔を真っ赤にしてじっとしていた。
「ルシアンは偉いわ。あなたは年相応ではないほど大人だわ。勉強も頑張っている。ウィルという兄がいて、負けないようにと自分のあり方を考えている。あなたはまだまだ甘えていてもいい歳なのに、甘えを知らない。お義母様に甘える事ができないなら、私に甘えてもいいのよ?」
「・・・ありがとうございます。でも、兄上に怒られてしま」
バタン!!
「何やってるんだ!?」
・・・・・・・・・・・・・
レティシアがテラスでルシアンとお茶をしている頃、寝台でウィルフレッドが目を覚ます。
「・・・ん・・・」
温もりが感じられない。手探りで探すが見つからない。
「・・・シア?・・・シア!?」
まどろみの中にいたウィルフレッドだったが、レティシアがいない事に気付くと、がばっと起き上がり、寝台を出て一目散に部屋を飛び出した。いない、レティシアがいない。必死に探すも見つからない。ウィルフレッドの脳に、会話が蘇る。
『薬飲めなんて言わない優しい婚約者がよかったのかしら・・・今からでも遅くないわ、取り替える?』
「・・・そんなのダメだ!シアに代わる者なんていないんだ!」
大声をあげて走り去るウィルフレッドに、使用人達は何事かと唖然としていた。そしてウィルフレッドはテラスに差し掛かり、見てしまう。勢いよく扉を開ける。
バタン
「何してるんだ!?」
ウィルフレッドの視界に入ってきたのは、レティシアの胸に顔を埋めて抱きしめられたルシアンが、顔を真っ赤にしていた姿だった。
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次回
だからと言って抱きしめる必要はないだろう!
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