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ルシアンだって男だ
しおりを挟むルシアンから奪い返して、ご満悦なウィルフレッドはレティシアを抱えて廊下を進んでいた。
「・・・ウィル・・・」
「何だ?」
「あそこまでする必要なかったでしょう?」
「いや、あったぞ?」
部屋についたようだ。ウィルフレッドはレティシアを抱えたまま器用にドアを開ける。
「ルシアンの下半身見なかったのか?」
「下半身?」
「あぁ、所在なさげにモジモジしていただろう?あれは・・・意識してる証拠だ」
「・・・意識?」
ウィルフレッドはソファに腰をおろすと、膝の上にレティシアを乗せる。
「シアを女性として見ているという事だ」
「そんなはず・・・」
「いや、ある。だからこそ言い聞かせておかないと、マズイんだ」
ウィルフレッドは、レティシアをしっかりと抱きしめてすんすんと髪の香りを嗅いでいる。
「ちょっと、ウィル、嗅がないでくれる?」
「別にいいだろう?シアはいい匂いがする。ずっと嗅いでいたいぐらいだ」
レティシアを横抱きにしたまま膝に乗せ、髪に顔を埋めるように擦り寄りすんすんと匂いを嗅ぎ続ける。
「ルシアンだって男だぞ?弟で歳が離れているとはいえ、レティシアにとっては血の繋がりがない男だ。今は良くても、あと数年もすれば身体つきだってしっかりしてくる。俺だってうかうかしてられない。俺とシアは10も歳が離れている。だが、シアとルシアンは8つ程だろう?それだけの事だって不安に思っているぐらいだ」
「私がルシアンに取られるとでも思っているの?」
「ルシアンだけじゃない。他の男全員が敵だ」
「大袈裟ね。ウィル、私はウィルだけだと言ったでしょう?愛しているのも、こんな事できるのも・・・」
レティシアはウィルフレッドの唇に軽く触れるようなキスをする。
「ウィルだけよ?」
ウィルフレッドはたまらず、唇を塞ぐ。レティシアの口をこじ開け、口内を味わうように舌を這わせ絡ませる。
「んはっ・・・」
「すまない、ちょっとやりすぎた」
「・・・ふふっ」
「・・・シア、俺は幸せだ。ほんの少し前まで、どんなに手を伸ばしても手に入らなくて、触れることも、抱きしめる事も、愛していると言う事でさえも伝える事ができなかった・・・それが今は側にいて、触れられて、こんな事までできる。少し前の俺に教えてやりたいな。もう少しだけ耐えろ、諦めるなってな」
「諦めていたの?」
「あぁ、少しだけ、諦めかけていた。いつまでも思いを拗らせていては気持ち悪がられるかもしれないからな。必死で諦めようとしていた。だが・・・無理だった。諦めようとするたび、足掻くたびに好きだという事を実感する。思い知らされる・・・シア、好きなんだ。シアの代わりなんていないんだ」
ウィルフレッドは、レティシアを強く抱きしめ、今あるこの幸せを噛みしめていた。
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次回
決まっているだろう?続きだ
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