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仲間が感じる違和感
しおりを挟む四方の辺境地へと試験的に設置していた通信機器が早速役に立つことになった。開発者であるコルテオは、通信がうまく行ったことに、喜びを感じていた。剣を持って、己の身体を使い戦うことは、コルテオにとって最も苦手な事であった。
「コルテオ、通信機があったおかげで、被害を最小限に抑えれそうだ。感謝する」
通信が無事に成功し、北の辺境伯に瞬時に知らせる事ができた。そして、西の辺境伯にも援軍を頼む事ができ、王都からも応援を出せた。早い対応ができたとウィルフレッドが、コルテオの元に礼を言うために訪れていた。
「いや・・・剣を振るうこと、戦うことを苦手とする俺だからな・・・こんな戦い方しかできないのさ」
「いや、これからは、コルテオが活躍する時代がくるさ」
「大袈裟だよ」
「謙遜するな」
にこやかに話していたコルテオだったが、少し周りを気にすると、声のトーンを落とし、二人にしか聞こえない声の大きさで、静かに話し出した。
「それより、本当に、軍の侵攻だけですむと思うか?」
「・・・何か気になっているのか?」
「いや、軍の侵攻、そんな単純な事だけってありえるのかな・・・ランドルスト公爵令息の話を聞く限り、ソハナス側に、やり取りをしていた相手がいるんだろう?国王陛下の寝首をかけば、混乱に乗じて国を乗っ取る・・・なぁ・・・もしかしてだが・・・城の中にまだ何かを目論んでいる奴がいたりしないか?」
「敵が潜んでいるって事か?」
「ん・・・何って言えないが・・・寝首をかけば混乱に乗じてって・・・国王の首をとったって、誰がわかるんだ?ソハナス側は実際に国王が亡き者になったなんて、わからないだろう?こっちみたいに通信機などがあるなら別として、どうやって知るんだ?」
「・・・確かに・・・そうだな」
ウィルフレッドは、コルテオが感じている違和感に、何か見落としていないか考える。
「なぁ、ウィルフレッド・・・陛下は無事・・・なんだよな?」
「あぁ、今は、近衛が数名付き護衛にあたっている」
「そうか・・・」
「まさかとは思うが、近衛達を疑ってるのか?」
「全くのゼロだと言い切れるか?ウィルフレッドは普段、彼等と鍛錬を積んで業務もこなしているから信頼できるだろうけど、俺にとっては嘲笑されてきた相手だ。よく思ってないのは事実だ」
「第三者の目という事か。いや、それも大事かもしれない。仲間だと思っているからこそ見逃す事もあるかもしれん。コルテオ、お前の勘もあながち間違いでもないかもしれないな。一緒に来てくれるか?」
ウィルフレッドとコルテオは、数名の近衛騎士達が護衛する、国王の元へと連れ立って向かった。全てがうまく事が運んでいる中、ウィルフレッドの胸中は決して穏やかではなかった。もう、既に日付は変わってしまっている。一刻も早く屋敷に戻って、愛しい婚約者を安心させたい。平静を装っていていも、心は穏やかとは言えず、焦りを感じていた。
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次回
何故、お前がここにいる?
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