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滴り落ちる血
しおりを挟む過去を語ったレイバンは、国王レオナルドの首に当てていた刃先をぐっと押し込み血を流れさせた。その血はレオナルドの服を赤く染め上げていく。
「貴様!父上に何という事を!!」
「これぐらいどうしたと言うのです?死ぬわけでもあるまいし」
「国王にこんなことをして、許されると思っているのか!」
「誰なら許されるんですか?私の両親なら殺しても許されるのですか?」
「今はそんな事言っていないだろう!」
「そんな事?私の両親はそんな事で済まされるような事でしたか・・・」
「とにかく剣を下ろせ!」
「ヴィンセント、黙れ」
「っ!?」
弾かれるようにレオナルドの顔を見たヴィンセント。その顔には焦りもなく、全てを受け入れているようで、威厳さえ感じた。
「殿下、無力ですね?もっと武力を磨いていたら、その者達の拘束ぐらい簡単に解けるでしょうに。全く、昔の私を見ているようですよ。あなた方王族には報いを受けてもらいますよ」
「何故こんな事をする!父上が何をしたというのだ!王族がお前に何をしたというのだ!」
「何をした?えぇ、何もしていませんよ?そう・・・何もしてくれなかった。あなた方は我々を見捨てたんです。戦って終わり・・・勝利したのでめでたしで終わったのでしょう?その後生き延びた私達は・・・生きたことを後悔する日々でした。せめてもの罪滅ぼしに、領地の復興に手を貸して頂けたなら・・・こんな恨みがましい思いも、固唾も少しは降りたでしょう。すまなかったと一言言っていただければ・・・いや、そんな事では許せるはずもないでしょうが・・・そんな事すらしなかったのですから。戦を仕掛けられた被害者ですか?怪我一つしなかったあなた方が被害者?笑えませんね。イズヴァンドの民は王家を、王族を憎んでいます。私がこうしなくとも、誰かがいずれしていたでしょう」
「レイバンよ、当時は私もまだ未熟であった。先王である父が床に臥せって、思ったよりも早くに王位に就くことになった。その隙を敵国に突かれてしまったのだ。私が未熟だった故だ」
「父上、謝らなくとも!父上は何も悪くない!私だって、今、父上が王位を譲られた年齢と同じです。だとしたら、自信などありませんよ!父上は何も悪くない!」
「黙らんか、ヴィンセント!」
「っ!!」
つい先ほどまで感情の見えない落ち着いた表情のレオナルドだったが、打って変わってその顔は怒りを露わにしていた。
「ヴィンセントよ、お前は王たる器は持っている。だがな、王とは絶対の存在ではないのだ。民がいて、貴族達が支えてくれ、はじめて王として成り立つのだ。それを何だ?王がいるから国が成っているとでも思っているのか?レティシア嬢の言う通りだな・・・お前はまだまだ勉強不足のようだ」
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次回
そして、私の事を一生憎んで覚えていてくれればと
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