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休暇二日目②犯人と黒幕
しおりを挟む宿を出ると、昨日と同じく注目を浴びながら街中をブルーノに乗って進んでいた。宿屋から出発したはいいものの、ウィルフレッドの言葉数が段々に減ってきている。馬上で、レティシアは前を向いたまま、後のウィルフレッドに声をかける。
「ねぇ、ウィル。全部は話せないと思うけど、王宮であった事、教えてくれないかしら?」
「・・・知らない方が良い事もあるぞ?」
「見くびらないで。私は辺境で生まれ育ったのよ?」
「・・・そう、だな。何から話せばいいか・・・」
いろいろありすぎて、何から話そうか、何を話しておいたがいいかをウィルフレッドは考えていた。
「とにかく、陛下は無事なのよね?」
「あぁ、少し怪我をされたが、命に別状はない」
「そう・・・陛下を襲ったのは誰なの?」
「・・・陛下の寝室に最初に忍び込んだのはマクシミリオンだ」
「ランドルスト公爵令息様?・・・あら、屋敷で謹慎中じゃなかったかしら?ん?待って、最初にってどう言うこと?」
「・・・マクシミリオンが忍び込んだのは近衛がすぐに取り押さえた。俺が王宮に着いた時には、マクシミリオンは既に牢の中だった」
「そうなの・・・マクシミリオン様はどうして陛下の寝室に忍び込んだりしたの?」
「シアを襲ったことで謹慎させられていただろう?ヴィンセント殿下の側近からは外され、次期公爵当主としての地位も失った。何もかもうまくいかず、父親を見返してやりたい一心でやったことにすぎない。マクシミリオンは、屋敷から抜け出して、オリバーに会いに行ったらしい」
「オリバー様に?」
「あぁ、何もかもうまくいかず、望んだものは手に入らない。自暴自棄になっていたらしい。オリバーに他国との繋がりを持っている貴族を紹介して貰い、事を進めていたらしいんだ。だが、最終的に、他国とは繋がっていなかった」
「繋がっていなかった・・・失敗したって事?」
ウィルフレッドの顔に影が落ちる。少し眉間に皺が寄ったようだ。
「マクシミリオンは利用されたんだ。他国と繋がり、事を進めていると思わせておいて、カモフラージュに使われた。黒幕は他にいた」
「黒幕・・・実際に陛下に怪我を負わせた人って事ね」
「あぁ・・・」
ウィルフレッドの表情は何かを思い詰めているようだった。言葉に詰まり、話すかどうかを悩んでいるようだった。
「ウィルのよく知る人だった・・・と言う事ね?」
「・・・シアもよく知っている」
「え?・・・そうなの?」
「あぁ・・・まさかだったよ。すぐ身近にいたんだからな。長年一緒にいて、何も気付かなかった」
「・・・まさか・・・副騎士団長様・・・?」
「あぁ、そのまさかだった」
ウィルフレッドの悲痛に歪んだ顔を見上げ、レティシアは辛かったのだろうと思った。後を振り向き、ウィルフレッドの体を優しくそしてしっかりと抱きしめた。
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次回
合わせる顔がないとでも言いたいの?
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