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国王の本音

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アルバートとウィルフレッドが連れ立って入っていった部屋の奥、国王がソファに身を任せ寛いでいた。


「父上、おはようございます」

「あぁ、アルバートか、おはよう」

「陛下、おはようございます」

「ウィルフレッド。来てくれたのだな」


国王はウィルフレッドに穏やかな笑みを向けた。


「十日の休暇、ありがとうございました」

「うむ。いい顔をしているな。あの日、お前の姿を見届けた者は、随分と堪えていたようだと皆が口を揃えて話していた。もう騎士団長として復帰はしてくれぬかもしれんと考えていた」

「以前の私ならそう申していたかもしれません。式を挙げれず、愛想をつかされて捨てられるかもしれないと絶望しました。俺で・・・いいのか?夫になっていいのか?夫でいていいのか?って。そう言った俺に、シアはあの夜会の時と同じ事を言ったんです。

『・・・そんなに知りたければ教えてあげるわ。あなたを夫にすると決めましたの。私の未来の夫はウィルフレッド・アバンス。この国の近衛の騎士団長様ですわ』

と」

「流石だな。夫人はウィルフレッドの事をよくわかっているようだ」


国王は腕を組んでうんうんと頷いている。


「近衛騎士というのは、騎士を目指す者殆どが憧れを抱いて志願してくる。近衛になれる者も一握り。そしてそこで頭角をあらわし近衛として大成するのもごく僅か。騎士団長を務めるにあたって、私的な時間を犠牲にしてきた者も多いだろう。私もお前にそうなれとは流石に言えない。だが、お前に騎士団長でい続けて欲しいと言うのは本音だ。夫人は、お前の全てを受け入れ、肯定し、尊重して、愛してくれる。結婚式を挙げないままなど、普通の令嬢なら耐え難いことかもしれぬ。だが、辺境伯令嬢として、国境で民の幸せと暮らしをずっと気にかけて来た娘だ。騎士の大変さも大事さも知っている。だからこそこのような事になっても、悲観せず、お前の全てを受け入れ、許し、慈しみ、愛すのだ。いい女を娶ったな」

「えぇ、本当にいい女です。ずっと恋焦がれてきたいい女です。離しません」

「くくくっ、どこかで聞いたセリフをお前も言うのだな」


国王は、はははっと、思わず声を上げて笑う。


「しかし、あの夜会でお前の人生が変わったように、息子も勇気を出せた。そして好きな女を手に入れた」


国王が第二王子のアルバートに視線を向ける。それまで黙って二人の会話を見守っていたアルバートが、自身の話題を振られたことで口を開く。


「そうですね。あの展開は予想はしておりませんでしたが、今行動を起こさなければ、マリーリアを兄上に持っていかれては困ると思いました。マリーリアは・・・ずっと兄上の妃になりたいと言っておりましたからね」


アルバートは小さく息を吐き、少し自信なさげな表情を見せ、視線を落とした。




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