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求める相手

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必死に呼びかけるも、話は終わりとばかりにエルサは通信機から離れていったようだった。


「エルサ・・・」

「父上、失敗したようですね」


エルサの声が消えてからしばらく経ち、クレイドルが通信機の前に現れたようだった。


「陛下、クレイドルです。娘とは何を?」

「王都に来ないかと誘ったのだ」

「そうでしたか・・・まぁ、無理な話ですね」

「何故だ!」

「エルサはここを離れたがらないんですよ。煌びやかで賑やかな王都にはまるで興味がないのです」

「・・・」


黙ってしまった国王のかわりにアルバートが対応する。


「叔父上殿、アルバートです。お時間をとらせてしまって申し訳ない。エルサ嬢にもよろしく頼む」

「殿下、お久しゅうございます。婚約が決まったとお聞きしました。おめでとうございます」

「あぁ、あ、ありがとう。では、そういう事です」

「承知しました。それでは失礼します」


通信機の前でアルバートはほんのり頬を染めていた。婚約という言葉に、愛しいマリーリアの可愛い姿を思い出してしまったのだろう。そしてウィルフレッドが口を開く。


「陛下、先日お会いした時にシアがエルサ嬢と話をしたのですが、彼女は辺境を守るのが自身の使命だと思っておいでです。その為、結婚適齢期であるにも関わらず婚約者もいない」

「変な虫がつくよりマシだ!エルサの相手は私がいい男を見繕ってやる」

「陛下、お気持ちはわかります。私にも娘ができればそう思うことでしょう。しかし、エルサ嬢が求めるのはどういった相手なのかご存知ですか?」

「エルサが求める相手だと?」

「はい、彼女が求めるのは見目でも財力でも地位でもない。自分を全て丸ごと受け入れてくれる相手です」

「どういう事だ」

「目の前にいるではありませんか、シアという女神のような女を手に入れた私が」


ウィルフレッドは自慢気に笑って見せた。


「騎士団長という肩書きも、公爵という肩書きも財力もいらない。私だから選んだと言ってくれたんです。次期公爵である私には自慢ではありませんが数多の婚約話がきていました。夜会に警備に出れば女性に囲まれる事だってあります。これはアルバート殿下もよくお分かりになられるでしょう。陛下だって婚約者が決まるまではそうだったと思うのです。肩書きや見目や財力に群がってくる女性ではなく、自分自身を見てほしいと。たとえ情けない姿でさえもさらけ出して、それごと愛して欲しいと」

「あぁ、それは理解できる」

「エルサ嬢もそうなのですよ」

「エルサも?」

「辺境伯令嬢である自身を受け入れ、考えさえも行動でさえも全てを受け入れ、それが貴女なのだと言ってくれる相手が欲しいのです。どれだけ愛されようがいい暮らしができようが、彼女の心が満たされないのですよ」


ウィルフレッドの言葉に国王レオナルドは黙って耳を傾けていた。




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