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恋バナとお手本?
しおりを挟む「ミリア、よかったわね」
「ありがとう、レティシア。何もかもレティシアのおかげよ」
「ふふっ、私は何もしてないわ。あなたを取り巻く環境がそうさせただけ」
二人は今、ソファに向かい合って座っている。どこのソファかというと、近衛の団長執務室にある応接セットだ。ミリアとアイオロスの婚約が発表された夜会から数日後の事。ウィルフレッドに差し入れを持ってきていたレティシアと、父である宰相に届け物をし、これまたアイオロスに差し入れを持参したミリア。それぞれの相手である二人は引き継ぎなどの仕事の話の真っ最中である。真っ最中であるが、視界に愛しい者の姿が映ると表情も緩み、捗っているのかいないのか。男二人はチラチラと視線を送っているのだが、女性陣が相手にしていない。レティシアとミリアは互いの恋バナに忙しいのだ。
「それで?呼び名を決めたんですって?」
「え、えぇ・・・」
「なんて呼び合っているの?」
ミリアはまだまだアイオロスとの仲に慣れず、しどろもどろになったり、赤面したり忙しい。
「・・・アースって」
「へぇ、じゃあ、ミリアは?」
「わ、私はっ・・・」
これでもかと赤面したミリアに代わって後ろから声がする。
「ちゃんと答えてくれないと寂しいではありませんか、ミリィ?」
「え、ちょ、ちょっと!」
「へぇ、ミリィって呼ばれてるのね」
レティシアは、真っ赤になってアイオロスに抗議するミリアの姿を微笑ましく見つめていた。突然首元に触れるものがあった。
「シア、アイオロスを見てるんじゃないだろうな?」
ウィルフレッドがレティシアの視線がアイオロスを向いているのではないかと嫉妬し、後ろから抱きつき肩や首に頭を押しつけてきたのだ。
「拗ねてるの?」
「拗ねっ・・・いや、そうかもしれん・・・騎士団長はやる気を失ってしまったらしい・・・」
「・・・まぁ、では少し休憩にしましょう?」
「それがいい」
「ウィル、こっちに座って」
「あぁ」
レティシアに手招きされ、ウィルフレッドはレティシアの隣に座ると左手でレティシアの腰を抱き、自身にグイッと寄せた。レティシアは持ってきていた差し入れからクッキーを一つ、ウィルフレッドの口元へと持っていく。ウィルフレッドは嬉しそうに、レティシアの手ずからクッキーを食べ咀嚼していく。
「ん、うまい」
ウィルフレッドはもう一回と強請るように口を開けて待つ。その様子は餌を待つ雛鳥のようだなとレティシアは笑うのを堪えながら、もう一枚クッキーを運んだ。そんな二人の様子を見ながら、ミリアは開いた口が塞がらず、ポカンと二人を眺めていた。その後ろで、所在なさげにどうすればいいのか困った顔でアイオロスが佇んでいた。
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