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泣いて縋るのは

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「ホント、夫人にはめっぽう弱いんだな」


ついさっきまで、涙を滲ませてお腹を抱えて笑いを堪えていたマクシミリオンが声をかける。


「嫌われでもしたら俺は生きていけない・・・」


ウィルフレッドは、片手でレティシアの手をとったまま、ドレスのスカートを掴むと、懇願するような表情で見上げていた。三人とも、一体どうすれば女性に興味がなかった騎士団長を、ここまで飼い慣らしてしまうことができるのか。唖然と見つめつつも、こんなにも恋い焦がれる相手がいる事を羨望の眼差しで見つめていた。


「嫌う事はないわ、安心して。でもね、きちんとしておきたいの。でないとずっとわだかまりが残ったままになるわ。私達は夫婦。先に進まなくちゃ。でしょう、ウィル?」

「あぁ、すまなかった」


レティシアはウィルフレッドの頬に両手を添えて包み込むように触れた。そして慈愛に満ちた表情で見つめる。ウィルフレッドはたまらずレティシアの足にしがみつくように抱きついた。


「大きな子どもみたい」

「あぁ、それでもいい。だから・・・」


ウィルフレッドが涙目で目を真っ赤にして訴える。


「今夜一緒に寝てくれるか?」

「どうしようかしら」


ウィルフレッドは悲痛な表情を見せる。涙が静かに一筋流れ落ちた。


「もう・・・仕方ないわね。一緒に寝るわ」

「しあぁぁぁ!!」


ウィルフレッドはこらえていた感情を溢れ出させた。ボロボロ泣いてぐずぐずで。


「っ・・・うっ・・・今日、だけ、か?毎日、一緒がいい。なぁ、シア?」


涙目で必死に訴えるウィルフレッドに、レティシアはふっと笑みをこぼすと、頭を柔らかく包むように抱きしめた。


「毎日一緒よ」


柔らかくて、暖かくて、いい匂いがして。母親の愛に包まれる幼子のように、ウィルフレッドは安心して満面の笑みになった。


「ウィルフレッドがこんな姿を見せるようになるなんて・・・驚きだね」


そう言うのはコルテオだ。高位貴族の子息らしく、あまり感情を面に出さず、誰からも慕われ、誰からも頼りにされ、絵に描いたような貴公子だった。それが今はどうだろう、妻となった女性のドレスを掴み、足にしがみつき、醜態を晒している。コルテオにとっては同期でもあるウィルフレッドは仲間でもあり、憧れでもあった。その彼がここまで自分を出せるようになったのは驚きではあったが、そんな相手ができた事は嬉しくも羨ましくもあった。自分もいつか、そんな相手に出会って、あたたかい家庭が持てたら・・・少しだけ欲を持ったコルテオだった。




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