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謝罪と意思の疎通
しおりを挟む私達の結婚式をよくも台無しにしてくれたわね。レイバンはそう、非難されるものだと思った。
「本当に申し訳ない事をしました。謝って済まされる事ではないのは重々承知しております」
レイバンはレティシアに向かって、そしてレティシアを後ろから抱きしめているウィルフレッドに向かって深く深く謝罪をした。
「レイバン様、頭をあげてください」
レティシアの優しい声掛けにゆっくりと身体を起こす。
「レイバン様、確かに許される事ではありませんわ。レイバン様がなさった事も、マクシミリオン様がなさった事も」
他人事だと思って話を聞いていたマクシミリオンがギョッとして身体を強張らせる。
「そしてソハナスがした事も」
レティシアは凛とした姿でそう言った。
「皆様の力が必要です。コルテオ様の研究と技術。マクシミリオン様の頭脳と行動力。そして・・・レイバン様の領地を、民を想う心」
レティシアは三人の顔を見渡すと、腕の中でゆっくりと後ろを振り返る。
「ウィル、今も尚、苦しんでいる民がいるわ。私はこの国で生まれ、この国で育ったわ。でも、見過ごすわけにはいかない。ソハナスを・・・乗っ取ってやるわ」
「なっ!?乗っ取る!?」
したり顔で話すレティシアに、ウィルフレッドは動揺を隠せなかった。乗っ取ってどうすると言うのだ。属国にするつもりなのか。国王とそんな話になっていたのかと唖然とした顔で見つめていた。それは三人も、様子を見ていた宰相も驚いている。開いた口が塞がらないとはこの事を言うのだろう。皆、ポカンとして、ただただレティシアを見ている。
「あら、私、何か変な事言ったかしら?」
「シア、乗っ取るってどう言う事だ?」
「そのままの意味よ」
「そのままって・・・」
困惑するウィルフレッド。そして会話に割って入る人物が。
「勝算はある・・・と?」
「勝算?そんなものありませんわ」
「ではどうやって」
「それはあなたが得意な所でしょう?マクシミリオン様」
マクシミリオンは面と向かって言われた一言に、驚きつつも、自分の能力を認められたようで嬉しさも込み上げる。
「と、得意かもしれないが、全てがうまくいくとは限らないだろう?」
マクシミリオンは視線を逸らして答える。その頬は少しだけ赤く染まっていて。
「残念だったな」
この会話のどこがどう、何を持って残念なのか。ウィルフレッドがマクシミリオンを見てニヤリと笑う。
「全く、ホント嫌な奴だな」
マクシミリオンは少しだけ睨みをきかせる。ウィルフレッドが言う残念とは、もちろん、レティシアの事である。いくら嬉しかろうが欲しかろうが、レティシアはもう自身の妻であり、手に入れる事はできず残念だったな、そう意味を込めたものだった。言わずとも表情や言動からそれを理解したマクシミリオンだった。
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