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駆け寄った理由

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「間に合わなかったな」


苦笑いしながらゆったりとした足取りで部屋に入ってきたのはウィルフレッドだった。


「あら、おかえりなさい」

「ただいま、シア」


ウィルフレッドはレティシアの側に寄ると、額にキスを落とした。


「間に合わなかったって?」

「ん?いや、宰相殿に、ミリア嬢がうちの屋敷に来ているって聞いて、アイオロスが迎えに行くと言い出してな」

「そうだったのね。何故突然アイオロス様が屋敷に現れたのかと思ったわ」

「すまんな、部屋の前まで来た所まではよかったんだが、会話が聞こえた途端急に走り出してな」


ウィルフレッドはレティシアが座っていた椅子に腰掛け、今は膝の上に乗せて愛ている。


「一緒に住むのはどうかと陛下に提案され、その日に宰相殿にもお許しを貰って・・・でもミリアの意思は聞いていないうちに話が進んでしまって・・・ミリアが嫌がるとどうしようと思っていたのですよ」


どことなく声が小さくなったような様子のアイオロスに、ウィルフレッドもレティシアも様子を伺う。抱きしめられていたミリアも、どうしたものかとアイオロスを覗き込んだ。


「嫌がってはいませんよ?ただ・・・」

「ただ?」

「恥ずかしいんです。まだ慣れない事も多いし、アース様は急に甘い態度をとるようになられましたし・・・いろいろと追いつかなくて」

「嫌・・・ですか?」

「嫌ではありません・・・むしろ嬉しっ・・・!!」


アイオロスのミリアを抱きしめていた腕に力が入った。


「あっ!あ、すみません・・・つい・・・」


慌ててアイオロスは腕を緩める。


「でも、団長?我慢できますか?耐えられると思いますか?」

「何がだ?」

「だって、一緒に住む事をミリアが嫌がっていたらと思ってたのに、一緒に住むようになる毎日を想像して、表情を緩めて、その上赤面までして・・・可愛いったらないですよ!」

「み、見ていらしたのですか!?」

「えぇ」


アイオロスは満面の笑みでミリアを眺めている。そしてウィルフレッドが説明をし出す。


「部屋の前に着いた時、たまたまメイドが君達のお茶を入れ替えた後に出て行こうとした時だったんだ。俺達が入るとわかっていたメイドがドアを開けたまま退出していったからね。話声が聞こえただけでも走り出したアイオロスだったのに、その開いたドアの隙間からミリア嬢の表情が見えたみたいでね」


ウィルフレッドは説明しながらも苦笑いしている。


「引き止めるのが間に合わなかった」


アイオロスは満面の笑みでミリアを抱きしめ、ミリアはワナワナ赤面したまま必死に耐えている。なんだかんだ愛されているようで、レティシアもホッとし嬉しく思っていた。



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