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現況と笑顔
しおりを挟むそしてその日のうちにクレイドルは自領へと帰っていった。数刻で着くような距離感ゆえ、単騎で馬で駆けて行った。イズヴァンドの地、教会と孤児院には、クレイドルが派遣した騎士が数名滞在する事となる。
「神父殿、辺境伯様から、こちらの復興と警備を任されました、辺境騎士団、一隊隊長のライエルと申します。それからこちらはミゲル、キース、ルードです。辺境領とは隣接しておりますから、行き来はすぐです。支援と連絡等も常に行う予定です。何かありましたら、いつでもお声がけください」
「本当に、何から何まで・・・ありがとうございます」
「いえ、我々は仕事で行っているだけです。お礼など無用ですよ」
ライエルは礼をすると、数名の騎士を引き連れて、自身の寝床となる割り当てられた部屋へと向かった。それぞれの騎士達も各自の荷物などを片付けに部屋へと向かう。その様子を部屋から窓越しに見ていたレイバン。
「・・・クレイドル殿には頭が上がらないな・・・」
レイバンはポツリと呟くと、各自部屋へと向かう騎士達を静かに眺めいていた。翌日、レイバンは領地内の視察に出ると、神父とレイラに告げ、出かける準備をしていた。
「レイバン様、お供いたしますよ」
何とも爽やかな笑顔で、隊長であるライエルが声をかけてきた。
「いや、ちょっと見て回るだけだ。すぐ戻るつもりだし、一人で構わない」
「そう言わずに。領地内の地形や、状態を見ておきたいのは私どもも同じです。目的は違えど必要な事は同じでしょう」
そう言われてしまえば、正論であるが故に無碍にはできず、ライエルが同行することになった。二人はそれぞれ出かける準備を終えると、馬に跨り駆けていった。しばらく走ると、領地の現状に、レイバンは厳しい顔をした。
「思っていた以上ですね・・・誰も住まない土地とはこれまでに荒れ果てるものなのですね・・・」
ライエルは走っても走っても、人の生活した痕跡のない土地をただただ唖然と見ていた。そしてレイバンも、これ程までとは思っていなかったのか、険しい表情になる。二人はあらかた周り終えると、教会へと戻ることにした。
「お帰りなさい」
教会に戻ってくると、庭で子供達の様子を見ていたレイラに出くわした。
「レイラさん、お疲れ様です。子ども達はとっても元気ですね」
「えぇ、どこにそれ程までの体力があるのだろうかと思ってしまうほどに元気なんです」
ライエルが話かけ、レイラが答える。会話があまりにも自然で、穏やかで、レイラも笑顔で。レイバンはそれだけで焦燥感にかられた。そして尚もライエルとレイラの会話が目の前で続いている。
「えぇ、いつも私が負けてしまうんです。子ども達はすごいんですよ。遊びも真剣ですから、うまく抜け道を見つけてくるんです。遊びに関しては子ども達のほうが先生かもしれませんね」
レイラが口元に手を当ててふふっと笑っている。ライエルとの会話がそれほどに楽しいのだろうか。もやもやする。その感情に名をつけれぬまま、レイバンはそっとその場を離れて行った。
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