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大きな服と破けた服
しおりを挟む「あ!レイバン様が帰ってきた!」
「レイラ姉ちゃんも一緒だ!」
教会の程近くまで来た頃、レイバンとレイラの乗る馬に気付き、子ども達が駆け寄ってくる。
「こら、急に駆け寄ったりしたら馬が驚くだろう。レイラが心配だったのはわかるが、馬に蹴られるぞ、危ないから離れろ」
「ごめんなさい!」
レイバンが子ども達に静かに怒ったと同時にレイラを支えていた腕に力が入る。怒りの感情だろうかとレイラは思った。だが、レイバンの本音は、子ども達が駆け寄ったことで馬が驚き、暴れでもしたら子ども達が危険な目にあうのはもちろんであるが、それよりもレイラが振り落とされでもしたらと力が入ってしまったのだ。レイラが怒りのあらわれだと思っているなど思いもせず、結局その腕の力は緩まることはなかった。
「みんな大丈夫だった?何もされていない?」
レイラはレイバンに支えられたまま、馬の上から子ども達に問いかける。
「僕たちは大丈夫だよ!」
「レイラ姉ちゃんこそ大丈夫?」
「えぇ、大丈夫よ」
だが子どもとは時に目ざとく遠慮は知らないものだ。
「でもお姉ちゃんどうして大きなお洋服着てるの?」
「あれ?お洋服破けてない?」
「どうしたの?」
野盗の男達に何をされそうになったなど、子どもの知識では思い付くものはないのだろう。
「えっと・・・」
どう説明すればよいものか、どうごまかせばいいのか、レイラは困り顔でうつむく。
「レイラは怖いおじさん達に追いかけられていたんだ。言うことを聴かないと殴るぞってな。一生懸命逃げていたら引っ掛かって服が破けたんだ」
レイラはレイバンが旨く取りなしてくれた事に安堵する。
「そうなの。レイバン様に助けて頂いたのよ」
「知らないおじさん達強そうだったのに、やっつけちゃったの?」
「あぁ、そうだ」
「そっかぁ、レイバン様は強いんだね!」
「かっくいいねぇ!」
最後に一番幼い男の子のジェイドが満面の笑みでそう言うと、その場に笑いが起きる。
「お前達、お出迎えご苦労だったな。レイラは怖いおじさん達に追いかけ回されて疲れてるから休ませる。くれぐれも遊んでくれなんて言いに来るなよ?」
優しい口調ではあったがレイバンの目は至って真剣だった。
「はい!」
「わかったよ!」
「あいっ!」
みんなの真似をして返事をするジェイドにまた笑いが起き、和やかな雰囲気の場になった。レイバンはまた静かに馬を歩かせはじめ、寝床にしている建物へと着くと、出迎えた神父に馬を預けた。
「すみません、馬を・・・」
「あぁ、構わんよ。私の大事な義娘を早く休ませてやってくれ」
「はい」
祖父である神父の言葉に引っ掛かりを覚えるも、レイバンは馬からヒラリと降りるとレイラを抱えて歩き出す。
「レ、レイバン様!自分で歩けますから!」
「大人しくしてろ」
レイラは必死に抗議するも、レイバンは離す気はなさそうだ。仕方なくそのまま大人しく運ばれる事にしたレイラだった。神父がニヤニヤと二人を見ていたことには気付いてはいない。
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