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通じ合う二人
しおりを挟む「た、たまたまだ」
ちょっとだけつかえたように声を発したレイバン。
「そうですか・・・嬉しかったのに・・・」
「へっ?」
レイバンは慌てて振り向く。
「私の勘違いですね。すみません」
レイバンは訂正しなければいけないと思うも、言葉が出てこない。
「ドア越しでも、ずっと側にいてくださったのだと思うと、嬉しくて」
「・・・き、気持ち悪いとは・・・思わないのか?」
「気持ち悪いですか?」
レイバンは視線をそらし、うつむいて続ける。
「あぁ・・・ずっと部屋の前に居続けたとしてだ・・・付きまとっているようなものじゃないか」
「・・・付きまとい・・・それが迷惑な相手ならそうでしょう。でも、レイバン様なら嬉しいですよ?」
レイバンはもう溢れ出す感情を押さえることができなかった。バッと顔をあげると、ズカズカとレイラの前まで歩いて行く。そのまま寝台に座っていたレイラの前に片膝をついて手をとった。じっと見つめてくるレイバン。
「レイバン様?」
「レイラ・・・好きだ」
レイラは目を見開いて驚く。まさか想い人から好きだと言われるとは。その上両想いだとは。レイラは固まったまま、じわじわと顔が赤く染まっていく。
「レイラ?・・・レイラはその・・・」
何も言わないレイラの顔を覗き込むように、レイバンの瞳は不安に揺れていた。きっとここでライエルの名が出てくる。自身の気持ちはへし折られるのだろうと覚悟を決めつつあった。
「本当・・・ですか?」
「あぁ・・・この気持ちに嘘はない」
「・・・本当・・・の気持ち」
「迷惑なら忘れてくれ」
「迷惑なんてっ!・・・あの・・・」
レイラは耳まで真っ赤になり、でも言わなければと決心する。今、言わなければこのまますれ違ったままだろう。両想いなのだから、この先の展開は決まっているのだ。
「なんだ?」
「私もですっ!」
「ん、ん?」
レイバンは、レイラが私もと言った事に聞き間違いではないかと耳を疑った。
「レイバン様が好っ、っ!!」
気付けばレイラはレイバンにきつく抱きしめられていた。
「く、苦しいっ、ですっ!」
「あっ、す、すまない!」
レイバンは慌てて抱きしめた腕の力を緩める。だが、抱きしめている手を離す事はなかった。
「ほ、本当なのか?レイラが好きなのは・・・ライエルじゃないのか?」
「私が好きなのは、昔も今も・・・これからも!レイバン様だけです」
「・・・俺は・・・夢・・・見てるのか?」
レイラはレイバンの頬を軽くつねる。
「痛いでしょう?」
「あぁ・・・痛い」
レイラは驚いて固まったまま放心しているレイバンを見てにこりと微笑む。レイバンはこれは夢などではないとようやく実感が沸いてきた。
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