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噛み合わない疑問
しおりを挟む「どうした?何があったんだ?」
震えながら何かに怯えていたレイラを抱きしめ、トントンと子どもをあやすかのように背中を叩いていた。
「あ・・・いえ・・・」
レイバンの胸に顔を埋め、レイラは顔をあげないまま答える。どうしたものかとレイバンは思案していたが、今宵は随分と風が強いらしかった。
ガタンッ
風に揺らされた窓が音を立てると、ビクッとレイラの身体が強張る。
「レイラ・・・大丈夫だ。俺がついてる」
ちょっとした物音に反応するほどに過敏になっているのだろう。トントンと叩いていた手を止め、優しくさする。レイラは明らかにホッとした様子だった。
「レイラ、立てるか?」
「は、はい!」
勢いよく返事をするも、レイバンに支えられながら立ち上がろうとするレイラだったが、足に力が入らず立ち上がることができなかった。
「レイラ、すまないが抱えるぞ?」
レイバンはそう言うと、レイラの背中と膝裏に手を差し込み抱えあげた。そのまま寝台へと運ぶ。レイバンはレイラを寝台へおろすと、掛布をかけて離れようとしたが、不意に気付いた。レイラの手がレイバンのシャツをつかんでいる。行かないでと、一緒にいてと頼られているようで、レイバンは口元が緩むのを必死に我慢した。レイラは目を瞑っている為、無意識なのだろう。これはどうしてやるべきか。シャツを掴んでいる手をじっと見つめる。
「あっ、す、すみませんっ!」
無意識にシャツを掴んでいたことに気付いて、レイラは慌てて手を離した。
「いや・・・」
何ならそのまま掴んでいてもよかった。いや、そのままでいて欲しかったと口に出しそうになる。それをグッとこらえて続ける。
「ライエルを呼んでくる」
「えっ・・・?どうしてでしょう?」
「ん?」
レイラは、何故今ライエルの名が出たのかわからないといった表情でレイバンを見る。そしてレイバンは、何故そんな不思議そうな顔をしているのかと疑問に思う。
「ライエルに会いたい・・・だろう?」
「・・・?ライエル様ですか?特には・・・」
二人の間に沈黙が流れる。先に口を開いたのはレイラだった。
「ライエル様に用事はありませんが」
「そうか・・・今は休むといい。俺は部屋の外にいるから何かあったらいつでも声をかけろ」
そう言ってレイバンは部屋を出ていこうとする。
「あ、あの!」
レイラが慌ててレイバンの背中に声をかけた。レイバンは歩みを止め振り向かずに答える。
「何だ?」
「もしかしてずっと側にいてくれたのですか?」
レイバンは何も答えない。ずっと部屋の前にいたなどと言えば、気持ち悪がられるのではないかと危惧したのだ。でもレイラはわかってて聞いたのだ。先程自分の元へ駆けつけてくれたのはすぐの事だった。ずっと側にいてくれたのだと。
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