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息ができる場所

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互いの気持ちがようやく通じあった二人。再度エルサはコルテオの手を引き、クレイドルの執務室へと来ていた。


「さっきとは表情がだいぶ変わったな」

「お父様に指摘されるまで気付かなかったなんて・・・お恥ずかしい限りですわ」

「そうだな。恋とは盲目とはよく言ったものだ」


エルサはほんのり頬を染め、そっぽを向く。そんな表情も仕草も可愛いなと、コルテオはニコニコ見つめている。


「して、コルテオ殿」

「は、はい!」


クレイドルに声をかけられハッとする。向き直れば真剣な目がこちらをい抜くように見ていた。だがその目はすぐに細められ、ふっと柔らかなものになった。


「エルサは昔から、辺境を継ぐ意思を持って育ってきた、それは今も変わらずだ」


コルテオは一語一句聞き漏らすまいと真剣な表情で話を聞いている。


「身内贔屓目かもしれないが、しっかりものの娘に育ったと思う。だが・・・今回の事で一つ知った」


クレイドルがエルサをじっと見つめ、コルテオに視線を戻す。


「君の事になると、冷静ではいられなくなるらしい。ククッ、本当に面白いものが見れたな」

「お父様、笑わなくてもいいではありませんかっ」


エルサは口を尖らせ悪態をつく。


「ほら・・・ククッ、フッ、フハッ!」

「も、もうっ!」

「っ、ククッ、すまんすまん・・・こんな豊かに表情を見せてくれるのはいつぶりぐらいだろうな。コルテオ殿・・・いや、義息子・・・コルテオ。感謝する」

「そんな、感謝だなんて」

「エルサの事だ、これからも君をつれ回し、振り回していくのだろう。中々に大変かもしれんが、付き合ってやってくれ。エルサの事、よろしく頼むよ」

「えぇ、それは・・・」


コルテオはニコッとエルサに笑みを向けると、表情を引き締めクレイドルに向き直った。


「彼女以上なんていません。唯一の人です。もう、エルサ嬢ナシでは無理なようです。もし彼女が僕の側から離れると言うなら、僕は何に対しても興味を失くし、ただ惰性で生きていくのだろうと思います。身体は生命活動を行っていても、心はそうはいきません」


コルテオはクレイドルの目をジッと見つめ次の言葉を発した。


「地位も名声もなにもありません、
大した男ではありませんし、エルサ嬢とは10以上も離れています。それでも僕は・・・」


コルテオはチラリと視線を落とすと、握っていた手に力をいれる。


「ずっとこの辺境にいたいです。ここは・・・僕の居場所です、生家のように息のつまるような苦しさなんてない。息ができる。ここでなら、自分らしくいられます。それもこれも・・・エルサ嬢あってですから」


クレイドルは納得したとばかりに頷き、ふっと表情を緩めた。




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