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77、今は君の為のリボン
しおりを挟む季節も秋めいてきた。この頃には公爵夫妻はノアールに領地の経営などのほとんどを任せていて、気ままに過ごしながら、家督を譲った後に移り住む準備をしていた。
オーロラとノアールは、公爵領の視察に行こうと馬車に乗り込もうとしていた。
「オーロラ!?どうした!大丈夫か!?」
馬車に乗り込もうとした寸前、オーロラが崩れ落ちるように倒れた。
「オーロラ、しっかりしろ!」
ノアールはオーロラを抱えると、足早に本邸に駆け込む。
「どうしたの?そんなに慌てて」
本邸のサロンにいた夫人が、オーロラを抱えて駆け込んだノアールに気付く。
「オーロラが!オーロラが!」
ノアールはパニックになっていて、慌てて言葉が出てこない。
「ノアール、落ち着いて。オーロラの顔色が悪いわね。部屋を用意させるわ。運んでくれる?」
「はい」
夫人に連れられてきた客室の寝台にオーロラを静かにおろして寝かせる。
「ノ、アー、ル?」
「オーロラ!よかった、気がついた・・・」
「私・・・」
「さっき倒れたんだ、体調が悪かったんじゃないのか?」
「・・・最近、眩暈がしたり、吐き気がしたり・・・」
「オーロラ、目が覚めたのね?」
「お母様・・・」
「オーロラ、最近食欲無くなってたりしない?好き嫌いが増えたとか」
「どうしてそれを?」
「やっぱりね」
「・・・お母様?」
「あなたのお腹には子がいるみたいね」
「・・・子?」
「えぇ、あなた母親になるのよ」
「・・・母親」
「オーロラ!!」
ノアールがオーロラの手を取って自身の頬に押し当てる。
「まだ実感はないでしょうが、大事になさいね?あなたの身体はもう、一人だけのものではないのですから・・・あぁ、ノアールの過保護が重症化しそうね。オーロラ、いろんな意味で覚悟なさい」
夫人は声を上げて笑っていてた。
「ロイドと私はあなたが安定期に入るまでは、本邸に滞在します。困ったらいつでも頼りなさい。それと、ノアール。多分心配で何も手につかないでしょうから、遠慮せずロイドに頼りなさい」
「すみません、ありがとうございます!」
夫人は公爵と一緒に屋敷に残ると提案した。領の視察は一旦取りやめ、サターン邸に戻ってきた。夫婦の寝室の寝台にオーロラを寝かせると、ノアールは侍女のアンナを呼ぶ。
「まぁ、オーロラ様がご懐妊ですか!」
「えぇ、アンナ、いろいろと手間をかけるけど、よろしくね」
「それは、おめでとうございます。何なりとお申し付けくださいね」
「ありがとう、頼りにしているわ」
アンナは他の使用人に指示をするべく部屋を出ていった。
「オーロラ、俺にも頼ってくれ・・・」
「えぇ、もちろん頼りにしてるわ。でも・・・残念だわ・・・」
「な、何が残念!?俺、何かしたか?悪いことしたんだったら謝る!」
「悪くはないんだけど・・・強引なノアールはしばらくお預けね・・・」
「へっ!?・・・あ、あぁ・・・」
「あんまり体を重ねたり・・・しばらくできないのね・・・」
「そ、それは仕方ない。でも、抱きしめるし、キスもする。最後までしなくても、気持ちよくさせれるように頑張る」
「そうよね・・・最後までできないのよね・・・」
「オーロラ?」
「こんなにも不安になるのね・・・」
「何が不安?」
「ん?だって・・・ノアールの欲求がたまると、他の女の人に取られてしまうかもしれないわ」
「そんな事あるはずないだろう?オーロラじゃなきゃダメだし、反応しないし、勃たない!」
「ふふっ・・・」
「オーロラ?」
「あんまり格好のいいセリフではなかったわ」
「あ・・・えっ・・・と、ごめん」
それから食事はオーロラが食べられるものにかわり、ほとんど寝台の上で過ごすようになった。ただ寝ているのではなく、ノアールが寝台から出してくれないのだ。それは性的な意味ではなく、甲斐甲斐しく世話を焼すぎる為に、行動範囲が寝台の上という結果になったのだ。
気持ちよくさせようと無理をさせないように気を付けながら肌に触れ、発せられるオーロラの声を堪能する。それだけでノアールのモノは昂りを見せる。初めての時のように、オーロラの体に放たれた白濁をバスルームで綺麗に洗い流すという世話をやくのも楽しみになった。
ノアールが不安になった時に巻いていた、互いに巻きつける紐や布も、今ではリボンになっていた。以前はノアールが不安で眠れない為にまかれていたが、今は、妊娠中にノアールが他の女性のところへ行ってしまわないかというオーロラの不安の為に巻かれるようになった。
「これで俺はどこにも行けないよ?安心して眠って・・・俺の愛しいオーロラ」
「ありがとう」
毎日眠る前の日課になった。今日も二人の腕は繋がっている。そこにはリボンが結ばれていた。黒地に金の刺繍が施されたリボンが。
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次回
伯爵位と新しい男爵家当主
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