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確信する心
しおりを挟むそして翌日の事。
「お嬢様、またお花が届いております」
メイドが昨日に続き花を部屋へと運び込む。メイドの手には赤いカーネーション。
「まぁ、綺麗・・・」
ローゼリアはソファから立ち上がり、メイドに歩みよった。
「昨日もでしたけれど、またお花が届くなんて・・・どなたなのでしょうね。お嬢様の婚約がなくなった事はまだ口外されていないと言うのに・・・」
「そうね・・・」
ポツリと言葉をこぼすと、ローゼリアはカーネーションをじっと見つめる。一度目蓋を閉じ、パッと目を開くとにこりと笑顔を見せた。
「誰だっていいわ。素敵なお花を頂いて悪い気はしないもの。摘み取られてしまったお花は元には戻らないわ。命つきるまで精一杯愛でてあげればいいの。ニーナ、飾ってくれる?」
「そうですね、花瓶をご準備いたします」
赤いカーネーションは窓際の日当たりのいい場所に飾られた。昨日のライラックと共に。
「また名前がないのね・・・」
送り主は見当がついている。だが、この花達をどんな思いで、どんな意味を込めて贈ってきているのだろうか。ライラックには恋の芽生えや、初恋という意味がある。それに対して赤いカーネーションの花言葉は、あなたに会いたくてたまらない。これだけ聞けばどこぞの令息が、はじめて恋をして、想いを花言葉にのせて愛を乞うているようにしか思えない。だがこの花の送り主にその様な感情はないだろうと思う。庭に咲いていただけ。季節の花であっただけ。そう言われればそこまでの事である。詫びである事への花ならば、そんな意味の花は選らばない。いや、花言葉に意味などもたせることすら考えていなければ?ローゼリアはただただじっと花を見つめていた。夕食の準備が整ったとメイドに声をかけられるまでずっと。だがひとつだけはっきりとしたことがある。食堂に向かう廊下で、ローゼリアは誰にも聞こえない程の小さな声で呟いた。
「・・・私・・・やっぱりあの方が好き・・・なのね・・・」
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