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温室と不審な花

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今日もまたカルストフ侯爵家に花が届けられた。これで何度目だろうか。チューリップにカーネーションにワスレナグサ、レモンの花にマーガレット。この時期に咲く花のすべてがローゼリアの部屋で咲き乱れているのではないだろうか。最初のライラックの花がまだ枯れぬうちに、この花達は毎日贈られてきたのだ。窓際に置いていたのは二つ目まで。そこからはテーブルの上、チェストの上と場所を移っていき、テーブルを追加で持ち込んだりもした。それでも場所が足りず、今や部屋の四方の壁が花で埋め尽くされている。ローゼリアの部屋はそこまで狭くはないはずなのにだ。それもそのはず、贈られてくる花は一輪や数本ではない。メイドが両手で抱えてくる程に大きな花束である。そんな大きな花束がそのまま収まる花瓶などなく、数個にわけられる。そのためローゼリアの部屋はさながら温室のような状態だ。ローゼリア自身は送り主に気付いているが、使用人達は困惑するばかり。中には警戒を促す者も出てきた。付きまといなら危ないと。ローゼリアは苦笑いしながら使用人達を嗜める。そんな時だった。


「お嬢様、失礼します・・・」


青ざめたメイドが部屋に訪れた。


「顔色が悪いわ。何があったの?」

「本日は朝に花が届けられたはずです。それなのにまた・・・」


その続きは容易に想像できた。二度目の花が届けられたという事。


「花はどこに?」

「はい、それが・・・気味が悪く、今は玄関に留めております」


メイドの言葉を聞き、ローゼリアは玄関へと向かった。そこには困った様子の花屋。そして父がいた。


「困ります、私どもの店では注文を受け付けただけにすぎませんし、お代は受け取っているのです。受け取り拒否などされましても・・・」

「こんな気味の悪い花、誰が注文したんだ」

「気味が悪いなどと!昨今、品種改良されてできた色合いにすぎません。それに送り主様は代理を立てられていたようで、どこのどなたかは存じ上げません・・・」

「しかしな・・・ではこうしよう、処分代はこちらで払う。そちらでどうにか処分してくれないか」


花屋と父が押し問答をしているところだった。


「お父様」

「おぉ、ローゼリアか・・・」


父のいる先に見えたのは大量の花。だがいつもとは様子が異なる。花屋が手にしているその花達は、真っ黒だったからだ。






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