33 / 40
温室と不審な花
しおりを挟む今日もまたカルストフ侯爵家に花が届けられた。これで何度目だろうか。チューリップにカーネーションにワスレナグサ、レモンの花にマーガレット。この時期に咲く花のすべてがローゼリアの部屋で咲き乱れているのではないだろうか。最初のライラックの花がまだ枯れぬうちに、この花達は毎日贈られてきたのだ。窓際に置いていたのは二つ目まで。そこからはテーブルの上、チェストの上と場所を移っていき、テーブルを追加で持ち込んだりもした。それでも場所が足りず、今や部屋の四方の壁が花で埋め尽くされている。ローゼリアの部屋はそこまで狭くはないはずなのにだ。それもそのはず、贈られてくる花は一輪や数本ではない。メイドが両手で抱えてくる程に大きな花束である。そんな大きな花束がそのまま収まる花瓶などなく、数個にわけられる。そのためローゼリアの部屋はさながら温室のような状態だ。ローゼリア自身は送り主に気付いているが、使用人達は困惑するばかり。中には警戒を促す者も出てきた。付きまといなら危ないと。ローゼリアは苦笑いしながら使用人達を嗜める。そんな時だった。
「お嬢様、失礼します・・・」
青ざめたメイドが部屋に訪れた。
「顔色が悪いわ。何があったの?」
「本日は朝に花が届けられたはずです。それなのにまた・・・」
その続きは容易に想像できた。二度目の花が届けられたという事。
「花はどこに?」
「はい、それが・・・気味が悪く、今は玄関に留めております」
メイドの言葉を聞き、ローゼリアは玄関へと向かった。そこには困った様子の花屋。そして父がいた。
「困ります、私どもの店では注文を受け付けただけにすぎませんし、お代は受け取っているのです。受け取り拒否などされましても・・・」
「こんな気味の悪い花、誰が注文したんだ」
「気味が悪いなどと!昨今、品種改良されてできた色合いにすぎません。それに送り主様は代理を立てられていたようで、どこのどなたかは存じ上げません・・・」
「しかしな・・・ではこうしよう、処分代はこちらで払う。そちらでどうにか処分してくれないか」
花屋と父が押し問答をしているところだった。
「お父様」
「おぉ、ローゼリアか・・・」
父のいる先に見えたのは大量の花。だがいつもとは様子が異なる。花屋が手にしているその花達は、真っ黒だったからだ。
応援ありがとうございます!
16
お気に入りに追加
149
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる