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番外編
番外編.子羊のピーター
※SSでは明るい日常エピソードが中心になります。
時系列:書籍一巻で、コルナでグリフィンが事故に遭ったその後
"彼"がブラッドフォードにやって来たのは、グリフィンの次の一言がきっかけだった。
『まったく、コルナ名物のローストを食いそこねた。あの地方で育てられた羊肉は美味いんだ。仕方がない。一頭丸ごと取り寄せるか』
グリフィンとしては「一頭分の肉」程度の意味だったのだろう。ジョーンズも申し込みの書類にはそう書いたはずだ。ところがどんな手違いがあったのか、グリフィンが回復して届けられた物体は、肉となる前の羊だったのである。
グリフィン、セラフィナ、ジョーンズの三人は、裏口に連れて来れられた「一頭分の肉」を前に呆然とするしかなかった。
『メェェエエエ』
つぶらな黒い瞳に白いモフモフの毛並み。身体は小さく顔はあどけない。母親を探しているのか、辺りをしきりに見回していた。
グリフィンがその生き物を――子羊を前に従者を振り返る。
「なるほど、確かに一頭分の肉には違いない。まだ生きてはいるが」
ジョーンズは「申し訳ございません」と恐縮し、やれやれと溜め息を吐いた。
「明日には返して参りますので。あるいは肉屋に捌かせたほうが早いのか……」
ところが冷静で現実的な男二人をよそに、セラフィナだけはまったく違う反応を見せた。
「こんな近くで初めて見た……」
おそるおそる子羊に手を伸ばす。子羊もセラフィナに歩み寄り、白い指に吸いつきじゃれついた。
「ひゃっ!」
母親と勘違いしたのか、セラフィナに頭を押し付け、しきりに甘えている。
『メェェエエエ』
「やだ、やだ、くすぐったいわ」
セラフィナは笑いながら子羊を撫で、さすり、ときには抱き締めていた。
「……」
「……」
グリフィンとジョーンズは顔を見合わせた。
――こうしてローストとなるのを免れた幸運な子羊は、セラフィナにピーターと名づけられ、ブラッドフォードの新たな住人となった。
現在は領内の農家の牧草地で暮らし、月に一度の夫妻の訪問を待つ身分である。
「ピーター!!」
すっかり大きくなったピーターだが、セラフィナが柵越しにその名を呼ぶと、どれだけ遠くにいようと飛んでくる。あいかわらずセラフィナを母親と認識しているようだった。
「ピーター、ピーター、久しぶりね。いい子、いい子」
『メェェエエエ』
ピーターと戯れるセラフィナを遠目に眺めながら、グリフィンは離れの小屋の壁に背を預けていた。そんな主人に苦笑しながらジョーンズが尋ねる。
「これからもセラフィナ様との食事の際には、羊肉を抜いたほうがよろしいですか? グリフィン様の好物かと思いましたが」
「……」
グリフィンも忠実な従者からの質問に、珍しくも苦笑で答えたのだった。
時系列:書籍一巻で、コルナでグリフィンが事故に遭ったその後
"彼"がブラッドフォードにやって来たのは、グリフィンの次の一言がきっかけだった。
『まったく、コルナ名物のローストを食いそこねた。あの地方で育てられた羊肉は美味いんだ。仕方がない。一頭丸ごと取り寄せるか』
グリフィンとしては「一頭分の肉」程度の意味だったのだろう。ジョーンズも申し込みの書類にはそう書いたはずだ。ところがどんな手違いがあったのか、グリフィンが回復して届けられた物体は、肉となる前の羊だったのである。
グリフィン、セラフィナ、ジョーンズの三人は、裏口に連れて来れられた「一頭分の肉」を前に呆然とするしかなかった。
『メェェエエエ』
つぶらな黒い瞳に白いモフモフの毛並み。身体は小さく顔はあどけない。母親を探しているのか、辺りをしきりに見回していた。
グリフィンがその生き物を――子羊を前に従者を振り返る。
「なるほど、確かに一頭分の肉には違いない。まだ生きてはいるが」
ジョーンズは「申し訳ございません」と恐縮し、やれやれと溜め息を吐いた。
「明日には返して参りますので。あるいは肉屋に捌かせたほうが早いのか……」
ところが冷静で現実的な男二人をよそに、セラフィナだけはまったく違う反応を見せた。
「こんな近くで初めて見た……」
おそるおそる子羊に手を伸ばす。子羊もセラフィナに歩み寄り、白い指に吸いつきじゃれついた。
「ひゃっ!」
母親と勘違いしたのか、セラフィナに頭を押し付け、しきりに甘えている。
『メェェエエエ』
「やだ、やだ、くすぐったいわ」
セラフィナは笑いながら子羊を撫で、さすり、ときには抱き締めていた。
「……」
「……」
グリフィンとジョーンズは顔を見合わせた。
――こうしてローストとなるのを免れた幸運な子羊は、セラフィナにピーターと名づけられ、ブラッドフォードの新たな住人となった。
現在は領内の農家の牧草地で暮らし、月に一度の夫妻の訪問を待つ身分である。
「ピーター!!」
すっかり大きくなったピーターだが、セラフィナが柵越しにその名を呼ぶと、どれだけ遠くにいようと飛んでくる。あいかわらずセラフィナを母親と認識しているようだった。
「ピーター、ピーター、久しぶりね。いい子、いい子」
『メェェエエエ』
ピーターと戯れるセラフィナを遠目に眺めながら、グリフィンは離れの小屋の壁に背を預けていた。そんな主人に苦笑しながらジョーンズが尋ねる。
「これからもセラフィナ様との食事の際には、羊肉を抜いたほうがよろしいですか? グリフィン様の好物かと思いましたが」
「……」
グリフィンも忠実な従者からの質問に、珍しくも苦笑で答えたのだった。
感想 98
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みんなの感想(98件)
書籍2冊を購入しました。
「契約結婚」ものが好きなのかもしれません(^^)
なかなか面白かったのですが、何点か残った疑問があります。
セラフィナをとりまく「父(ヘンリー)」「母」「母方の叔父」「母の父 伯爵」のことです。
「王族からも妻にと望まれるほどの美しい娘のアンジェラ」の結婚相手として、なぜ「母の父」が嫁ぎ先として選んだのが「貴族としても子爵という低い方で、裕福でもなく、おまけに娘を愛しているわけでもない性格も良くなさそうな男」だったのか、「父(ヘンリー)はどういうつもりでいたのか」(結婚前から平民に近いクレアと愛し合っていたけれど、経済的にアンジェラと結婚した??)。
「母の弟である現伯爵」の結婚式での意味深な言葉。「父 ヘンリーの弁明や本心を聞くことなく、あっさりと死なせてしまったのには何か意味があるのでしょうか???(これは作者様に対する謎なのですが・・・)
子爵家は滅んでしまったのでしょうか??
謎が多くてもう一冊書いていただきたいと切に望みます!!
ミュート中です
解除
完結おめでとうございます♪お疲れ様でした。
いつも更新を楽しみにしていました。
色々な試練の先にあった二人の幸せがとても嬉しかったです。
お忙しそうなので番外編まで書いてくださるなんて感激です!
二人のその後がもっと見たいです。
二人の穏やかな時間が読めることを楽しみにしています。
ミュート中です
解除
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