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7.潜入! ウェアウルフ村
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ウェアウルフの子供たちと一緒に門へと向かうと、ウェアウルフの2人組は僕たちを見てきた。
「ん、サム坊……そのウマはどこで拾ってきた?」
「みずあびをしていたら、ちかよってきたんだ」
ウェアウルフの1人は僕をじっとみると、そっと手を差し出してきた。
さすがに慣れ過ぎているのも不自然なので、僕は警戒して身を引く素振りをした。
「…………」
手を伸ばしたウェアウルフは少し不満そうな顔をしたが、隣にいたウェアウルフは笑いながら言った。
「たまたまボウズたちとウマが合っただけみたいだな」
「ウマだけにか……もっとウマいこと言って欲しいモンだ」
「はははは……ちゃんとおかーちゃんに許可を貰えるといいな」
まもなく子供たちは、自分たちの家へと案内してくれた。
元々ウェアウルフたちの家は、質素な造りをしており、貧乏な寒村という雰囲気の場所だが、この兄妹の住む家はその中でも特に貧しそうだった。
辛うじて納屋はあるようだけど家畜の臭いがしないし、家の壁もボロボロという感じだ。嵐が来たら壊れてしまいそうな危うさも感じる。
「おかーちゃーん!」
子供たちに呼ばれると、母親のウェアウルフが出てきた。
ウェアウルフと言っても、エルフハントをしに来たウルフマンの姿ではなく、一般的な主婦にオオカミ耳が付いているような外見の、どこにでもいるお母さんだ。
彼女はエプロン姿で出てきたが、僕を見てぎょっとしていた。
「おかえ……って、そのウマ……どこで拾ってきたの!?」
「かわのそばで水をのんでたんだ。ひとになれてるみたいだし……かっていい?」
母親は僕の顔を見ると、勿体ないと言いたげにため息を付いた。
「確かに……人慣れしてそうだけど、うちじゃ飼えないよ。お父さんの病気……治りそうにないしね」
「……そうかぁ」
ウェアウルフの子供たちは、残念そうに僕を見た。
「そういうわけで……エクセレントブラック号……おまえをかってやることはできないみたいだ」
そう言われると、僕はあえて残念そうな顔をして、低く喉を鳴らしてみた。
心の中では、ウェアウルフの村に入れたことを喜んでいるのだけど、それを表に出さないことが肝心だろう。
間もなく、首を下げて残念そうな雰囲気を出したまま、彼らの前から去っていくことにした。
幸いにも、このウェアウルフの村には、森などもあるため身を隠すのは容易い。森の中へと入り込むと、僕はキンバリーの匂いを探すことにした。
風向きが変わると、すぐに僕の鼻の穴に彼女の匂いが入り込んできた。
この様子だと、案外すぐ近くにいるようだ。
周囲を確認しながら森の中を進んでいくと、洞窟の前へとたどり着いたのだが、問題はここからだ。
『ここか……』
さて、どうするべきだろう。
下手に突っ込んだところで、変なウマが来たと追い返されるのがせいぜいだろう。入り口には見張りと思しきウェアウルフも立っているわけだし。
せめて、中の様子だけでも確認したい……そう思うと、自分のアビリティが【ユニコーン・ケンタウロス】という名前であることを思い出した。
――ユニコーンと言うことは、僕にも魔法が使えるのではないだろうか?
すぐに目を瞑ると、僕は頭の中の手帳を捲るように考えを巡らせた。
ニート生活がとても目立つけど、僕の35年間の記憶の中に何かヒントになることはないだろうか。
「…………」
「…………」
ニート時代に思い浮かぶことと言えば、親と言い合いをしたことや、他の兄弟からゴミのように見られたこと。他には……エッチな画像を見たこと。匿名掲示板を見たこと。エッチな画像を見たこと。匿名掲示板を見たこと。バイクの画像や動画を見たこと。そしてエッチな画像を見たこと。
僕って、本当にゴミだっ!
ならば、更に記憶にさかのぼって働いているときは学生時代のころを思い出してみても、特に役に立ちそうもない情報しかない。自分のことをゴミゴミだと思ったとき……あれ、僕のモノではない記憶が混じっていた。
その記憶は、古めかしい建物……ちょうど中世のヨーロッパに出てきそうな木造りの建物の一室で、ボロボロの書物を読みながら、ときどきお茶を飲んでいる……そんな記憶だった。
――これ、キンバリーの記憶!?
どうやら、彼女とは首輪で繋がっているせいか、記憶の一部を共有できているようだ。
これは幸いと、僕は目を皿のようにして記憶を深堀した。
記憶の中の彼女は、魔法の勉強をしているようだ。それも……離れた位置にいる相手の様子を探るという、今の僕には重要な魔法を習得しようとしている!
その魔法はトレース。意味は後をつける。追跡。なぞる。
トレースという単語がわかると、キンバリーの視野を通して、その魔法の意味が意識の中に刻み込まれるように伝わってきた。だけど、これはまだ理論が構築されただけだ。
この魔法の本当の意味を知りたければ、元となったアビリティの名前が必要だ。
トレース。追跡……なぞる。
僕は少し考えてから、トレースだけに注目しても意味がないことに気が付いた。
これってパワーダウンしたのがトレースという能力となったんだ。つまり、元となった能力はもっと凄い。もっと色々なことができて、劣勢を跳ね返すような強力な特殊能力だったんだ。
元々はどんなことができたアビリティだ? どうしてお前はこういう形にパワーダウンした??
少し考えると、僕はハッとした。
人間の技術だけで再現できるのがトレース……追跡だったんだ!
つまり、人間では再現できない、神のみが作り出せる本体を推測すればいい。
僕はキンバリーの読んでいる魔導書の細かい文字を記憶として追った。彼女はアブソルートマナセンスという特殊能力を持っているおかげか、魔文字から著者の記憶と、当時の身体のマナバランスを推測してくれた!
わかった……第三の目だ!
トレースを使うと、すぐにキンバリーの姿が見えた。
「ん、サム坊……そのウマはどこで拾ってきた?」
「みずあびをしていたら、ちかよってきたんだ」
ウェアウルフの1人は僕をじっとみると、そっと手を差し出してきた。
さすがに慣れ過ぎているのも不自然なので、僕は警戒して身を引く素振りをした。
「…………」
手を伸ばしたウェアウルフは少し不満そうな顔をしたが、隣にいたウェアウルフは笑いながら言った。
「たまたまボウズたちとウマが合っただけみたいだな」
「ウマだけにか……もっとウマいこと言って欲しいモンだ」
「はははは……ちゃんとおかーちゃんに許可を貰えるといいな」
まもなく子供たちは、自分たちの家へと案内してくれた。
元々ウェアウルフたちの家は、質素な造りをしており、貧乏な寒村という雰囲気の場所だが、この兄妹の住む家はその中でも特に貧しそうだった。
辛うじて納屋はあるようだけど家畜の臭いがしないし、家の壁もボロボロという感じだ。嵐が来たら壊れてしまいそうな危うさも感じる。
「おかーちゃーん!」
子供たちに呼ばれると、母親のウェアウルフが出てきた。
ウェアウルフと言っても、エルフハントをしに来たウルフマンの姿ではなく、一般的な主婦にオオカミ耳が付いているような外見の、どこにでもいるお母さんだ。
彼女はエプロン姿で出てきたが、僕を見てぎょっとしていた。
「おかえ……って、そのウマ……どこで拾ってきたの!?」
「かわのそばで水をのんでたんだ。ひとになれてるみたいだし……かっていい?」
母親は僕の顔を見ると、勿体ないと言いたげにため息を付いた。
「確かに……人慣れしてそうだけど、うちじゃ飼えないよ。お父さんの病気……治りそうにないしね」
「……そうかぁ」
ウェアウルフの子供たちは、残念そうに僕を見た。
「そういうわけで……エクセレントブラック号……おまえをかってやることはできないみたいだ」
そう言われると、僕はあえて残念そうな顔をして、低く喉を鳴らしてみた。
心の中では、ウェアウルフの村に入れたことを喜んでいるのだけど、それを表に出さないことが肝心だろう。
間もなく、首を下げて残念そうな雰囲気を出したまま、彼らの前から去っていくことにした。
幸いにも、このウェアウルフの村には、森などもあるため身を隠すのは容易い。森の中へと入り込むと、僕はキンバリーの匂いを探すことにした。
風向きが変わると、すぐに僕の鼻の穴に彼女の匂いが入り込んできた。
この様子だと、案外すぐ近くにいるようだ。
周囲を確認しながら森の中を進んでいくと、洞窟の前へとたどり着いたのだが、問題はここからだ。
『ここか……』
さて、どうするべきだろう。
下手に突っ込んだところで、変なウマが来たと追い返されるのがせいぜいだろう。入り口には見張りと思しきウェアウルフも立っているわけだし。
せめて、中の様子だけでも確認したい……そう思うと、自分のアビリティが【ユニコーン・ケンタウロス】という名前であることを思い出した。
――ユニコーンと言うことは、僕にも魔法が使えるのではないだろうか?
すぐに目を瞑ると、僕は頭の中の手帳を捲るように考えを巡らせた。
ニート生活がとても目立つけど、僕の35年間の記憶の中に何かヒントになることはないだろうか。
「…………」
「…………」
ニート時代に思い浮かぶことと言えば、親と言い合いをしたことや、他の兄弟からゴミのように見られたこと。他には……エッチな画像を見たこと。匿名掲示板を見たこと。エッチな画像を見たこと。匿名掲示板を見たこと。バイクの画像や動画を見たこと。そしてエッチな画像を見たこと。
僕って、本当にゴミだっ!
ならば、更に記憶にさかのぼって働いているときは学生時代のころを思い出してみても、特に役に立ちそうもない情報しかない。自分のことをゴミゴミだと思ったとき……あれ、僕のモノではない記憶が混じっていた。
その記憶は、古めかしい建物……ちょうど中世のヨーロッパに出てきそうな木造りの建物の一室で、ボロボロの書物を読みながら、ときどきお茶を飲んでいる……そんな記憶だった。
――これ、キンバリーの記憶!?
どうやら、彼女とは首輪で繋がっているせいか、記憶の一部を共有できているようだ。
これは幸いと、僕は目を皿のようにして記憶を深堀した。
記憶の中の彼女は、魔法の勉強をしているようだ。それも……離れた位置にいる相手の様子を探るという、今の僕には重要な魔法を習得しようとしている!
その魔法はトレース。意味は後をつける。追跡。なぞる。
トレースという単語がわかると、キンバリーの視野を通して、その魔法の意味が意識の中に刻み込まれるように伝わってきた。だけど、これはまだ理論が構築されただけだ。
この魔法の本当の意味を知りたければ、元となったアビリティの名前が必要だ。
トレース。追跡……なぞる。
僕は少し考えてから、トレースだけに注目しても意味がないことに気が付いた。
これってパワーダウンしたのがトレースという能力となったんだ。つまり、元となった能力はもっと凄い。もっと色々なことができて、劣勢を跳ね返すような強力な特殊能力だったんだ。
元々はどんなことができたアビリティだ? どうしてお前はこういう形にパワーダウンした??
少し考えると、僕はハッとした。
人間の技術だけで再現できるのがトレース……追跡だったんだ!
つまり、人間では再現できない、神のみが作り出せる本体を推測すればいい。
僕はキンバリーの読んでいる魔導書の細かい文字を記憶として追った。彼女はアブソルートマナセンスという特殊能力を持っているおかげか、魔文字から著者の記憶と、当時の身体のマナバランスを推測してくれた!
わかった……第三の目だ!
トレースを使うと、すぐにキンバリーの姿が見えた。
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