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ルベライト公爵邸の晩餐。
しおりを挟む……マジか。
俺は今、戦慄している。
前回までの女装着せ替えごっこの件ではない。
この小説のサブタイが珍しく……まともなことにっ!!
すごいまとも。普通の異世界ファンタジー貴族の邸編のサブタイじゃん。
今までのなんちゃってサブタイどこ行ったぁっ!まさか、この回はまともな貴族生活回になると、いうのか……!?
……そう思っていた俺も、おりました。
期待した俺も、おりました。
「うぅ~……プリン体いぃぃ……」
未だプリン体の悪夢から解放されない義父上は、サンダルを履いていた。なるだけ足の指の負担にならないよう、ぶかぶかサンダルを履いていた。
貴族だって時にはサンダルも履くのだ。例え高位貴族の公爵であれど、近衛騎士隊長であれど、プリン体の前ではサンダルを履くしかないのだ。
……プリン体、恐るべし。
「さぁ、今晩はルベライト公爵領特産!イカそうめん!イカメシ!イカフライ!たくさん食べていってねっ!」
テーブルにぎっしりと並べられた大量のーーイカ料理。
「プリン体~~っ」
義父上が悲鳴を上げた通り、プリン体。大量のプリン体料理。
いや、イカは美味しいし、好きだけど。前世日本人の感覚から言えば生の魚介類はありがたい。因みにタコの刺身もある。楽しみである。
元々ルベライト公爵領は国内有数の貿易港を抱え、数々の海産物ぎ水揚げされる漁港がある。
刺身なんかも有名で、魔法の冷凍冷蔵解凍技術によりルベライト公爵領から王都直産の魚介類も美味しく食べられるのだ。
イカそうめんもタコのお刺身も美味しい。イカメシもイカフライも美味しい~っ!!
あぁ、ライスは大公邸でも食べられるが、海産物はまだおねだりしていなかったのだ。
「気に入ったのだったら、大公邸にも海産物を卸す?」
と、義母上!なんと!
「えぇ、ユウェルたんも気に入ったようですし」
シェルも俺の気持ちを汲み取ってっ!嬉しい~っ!
「あの、マグロや鮭もありますか?」
「もちろん~!任せて!イクラも送るね」
イクラまでっ!イクラの醤油漬け食べたぁいっ!
うん、いい義母上ができて最高だ!
「それにせっかくの家族の晩餐なのだから、あまり堅苦しく考えないでね」
「はい、ありがとうございます」
でもさすがにあ~んとかはできないよね。シェルと2人っきりではないのだし。
「ほら、アナタ。私たちも率先してしないと、2人が緊張しちゃうでしょう?」
義父上にプリン体を植え付けた張本人義母上がニコニコしながら義父上の肩を掴む。
「ビクプリッ」
ほら、義父上がもう何かよく分からない鳴き声発してるし。
「ほら、アナタ。あ~んっ!」
あ~んいったぁっ!義母上あ~んいったぁっ!しかも、イカそうめんあ~んしてるぅ~っ!
※良い子は真似しないでください
「もう……ひぐっ、許してくださっ、うぅう……っ」
社交界を騒がすイケメン近衛騎士隊長が、泣きじゃくってるぅー。マジ義母上最強すぎるぅ~っ!!
「じゃぁ、まずは3日、妹を我慢しなさい」
「3日もぉっ!?」
そこまで驚愕する罰だろうか、それ。
「プリン……ビール」
「はいいぃぃっ!!!」
シスコンが義母上に完全調伏された~~っ!
「ほら、ユウェルちゃんもシェレグくんも!あ~んしあっちゃいなさいなっ!」
泣きじゃくる義父上をよそに、義母上がめっちゃ笑顔向けてくる~っ!俺たちのあ~んが見たいからって……義父上をプリン体で脅し罰を与える義母上、最恐である。
「ほらシェル、あ~ん」
シェルたんにイカメシをあ~んしてあげれば、シェルたんもはむり。そういや、海に面したルベライト公爵領は貿易も活発だから米も入ってくるんだよなぁ。だからこそ、イカメシも存在するのだ。大公邸で仕入れている米もルベライト公爵領を通ってきているものだろう。
何より久々のイカメシは美味しいっ!でもビールの飲み過ぎとシスコンには充分に注意だな!
「ん、ユウェルたんのあ~んで最高に美味しい」
ガビーンと項垂れる義父上とは対照的に、シェルはどこまでも幸せそうであった。
いや、ほんとにこれでいいのか公爵邸の晩餐んんっ!
義父上への罰みたいになってるけどぉっ!
そしてその後のサロンでは塩茹で枝豆をおつまみに、義母上とシェルがキンキンに冷えた生ビールを楽しんでいた。
この世界の成人は18歳で、エーデルシュタイン王国では18歳からお酒が飲める。
しかし日本人の記憶が蘇ってしまった俺としては20歳まで待ちたいところである。
もちろん日本のみなさんは、お酒は20歳になってから。……だよ?
そんなわけで生ビールを楽しむ義母上とシェルの横で、俺はレモンソーダをいただいていた。
あと、デザートにプリンをもらった。カラメルソースのほろ苦さが最高~っ!
そんな中みなさん気になっているだろうシスコン義父上はと言うと。
「うぅ……ごめんなさい……ごめんなさい……プリン恐いよう」
遂にプリンそのものの恐怖症になったか。現在プリンを味わっている身としては心苦しいが、母上の部屋のクローゼットとカーペットくんかくんかした義父上への罰でもある。ここは甘んじて受け入れるべきである。
「……ビール飲ませて」
あ、最後にお父さんの切実な願いがぁ――――……。
とりましっかり3日間、妹禁っ!!!
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