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帰ってきたアホども。

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「こんにちわ、こちら菓子折りです」
「こりゃまたどうも、丁寧に」
本日大公邸に、お客がきた。
菓子折りを持ってきたところは、まぁ合格だろうか。だから今日のところは客として扱ってやろう。

侍従にもお茶菓子を指示し、菓子折りを手渡してきたヴィーノとオマケのアップフェルを通す。

しかし案内した応接間のソファーにはヴィーノだけが腰掛け、アップフェルが床で四つん這いになっているのが気になる。

「ほら、アップフェル、リンゴジュース」
「アップルプルフェエェルッ!」
いや、何その謎の鳴き声えぇっ!!
そして侍従が用意したのはアップルティーやぞっ!!まぁジュース代わりにがぶ飲みしてもいいが、その場合は砂糖を適量加えて冷やして飲むのだ。

貴族社会では邪道なので、俺は大公邸でシェルたんと2人だけの時に楽しむ。
前世のジュースティーを思い出す、ほどよく甘く爽やかな味わい。

なお大公邸のみんなは知ってるので、料理長が毎日いくつか作ってくれていて、みんな好きな時に休憩がてら飲んでいる。

最近はレモンやピーチなどの味も増えてめちゃおいしす。

ついでに夏用にアイスミルクティーも用意してくれた。マジ美味しい最高。

そんな中、一応客として扱ってやることにしたのでアップルティーにしたのだが、ジュースティーでも良かっただろうか。今度ヴィーノだけには出してあげよう。
今なら受けトモとして、仲良くやっていける気がするから。

「その、留学は?」
アップフェルが馬になっているので、無視してヴィーノに問う。てか、結局馬になったのはお前の方かよアップルプルフェエェルッ!!

「はい、この夏の間に強化ミキサー合宿を受けまして」
アップフェルをミキサーにかけてリンゴジュースにする合宿か?
隣国でシェルたんの姉君もしっかりと鍛えてくれたようで何より。
アップフェルは今や立派な馬である。

ただ……ひとつ注文をつけるとしたら……

馬なら厩舎に案内すべきだったな。こんど家令を通してお客の愛馬をしっかりと厩舎でお預かりするように指示してもらおう。

くいっ。俺もアップルティーに口をつける。あぁ、美味しい。

「そして無事、ヴィクトリアさまから及第点をいただきました!」
ヴィクトリアさまというのは、この2人を任せたドSの女王さま……じゃなかった。シェルたんの姉君の名である。

「へぇ、このアホをどういう風に教育したんだ?」
「あ、はい!では是非ご覧ください!」
そう言うと、ヴィーノがどこからか馬鞭を取り出し立ち上がり、四つん這いになっているアップフェルの後ろに立った。ま、まさかっ!?



バシイィンッ!!

「アップルプルフェエェルッ!!」
ヴィーノの馬鞭がアップフェルのお尻を鋭く討ち抜き、アップフェルがよろこびのいななきを響かせる。

ピシィンッ!!

続いてもういっちょ。

「アップルプルフェエェルッ!!!」

アップフェルにしてはなかなかの嘶きかも。そうか、こっちの馬なら寧ろ厩舎に置けば他の馬がストレスに感じてしまうかも。

仕方がないから次回からも馬として応接間の床の一郭に馬用スペースを用意してやろう。

「こうして適度に躾をしています!」
ヴィーノは受け男子として逞しくなったなぁと思いつつも、アップフェルがもっとアホになっていないかだけが心配なのだが。
もちろんアップフェルの尻は心配などしていない。寧ろ真っ赤っかになってひりひりすればいいと思う。

そして青唐辛子味噌をねっとりぬっとりぬったれえぇぇっ!
※良い子のみなさんは食べ物をおちりに塗ってはいけません

ルベライト公爵領は外国から味噌も仕入れてくれる。味噌を仕入れて味噌汁の作り方を料理長に伝授したらとても感激されてしまった。

ついでに青唐辛子味噌も作ったから、侍従にお土産用に包んでくれと指示する。

因みに青辛子味噌は騎士団でも人気らしい。毎日シェルたんが料理長がこしらえた青唐辛子味噌を持って、普段仏頂面なのにとっても笑顔で出勤していく。青唐辛子味噌はシェルたんの笑顔ももたらしてくれるすごいアイテムなのだ。

――――――何に使っているかは……ツッコんではならない。これ、受けの勘。

「全く、お前らは」
ほんと、うちの青唐辛子味噌マニアシェルたんも呆れモードですよ。

俺の隣で俺の腰抱き寄せながらすりすりしていたシェルたんがついに口を開いた。

ぶっちゃけ、客のことなどお構い無しに俺を愛でていたシェルたんである。

俺は客として扱ってやっていたが、シェルたんにとってはまだまだ客扱いにまでは及ばないようだった。

「鞭の振り方が甘ぁい!」
そこぉっ!?そこなのぉっ!!?
そしてシェルたんは名残惜しそうに俺の頬に口付けをして……ひゃあぁっ。その後さっと立ち上がり、アップフェルの後ろに立つ。

え、何を?まさか、シェルたんっ!!

「もっとこうっ!腕だけではなく、身体を使って!」
シェルたんまでどこかから馬鞭を取り出し、身体を動かしつつレクチャーをしているうぅぅっ!!

「はいっ!」
そしてシェルたんのアドバイスに、ヴィーノが身体全体を使って馬鞭を振るう。

パシイイィィンッ!

あ、ほんとだ。さっきよりもいい音っ!

「あんっ」
初めてアップルプルフェエェルッやめたよ、アップルプルフェエェル。

ピシイイィィンッ!!

「あんっ、だめっ」

ポッシュウゥゥンッ!!!

「あん、だめぇ、もっとぉっ!」
こ、これはもしやっ!

俺も立ち上がった。

「ダメ」
「ユウェルたん?」
止めるな、シェルたん。ここは譲れない。

「発音がまだまだ!もっと口を大きく開けて、声を張りつつ最後までしっかり発音っ!アンダメモットォッ!!はい、もう一度!」

「アン、ダメモットッ!」
アップフェルが嘶く。

「違う違う!エスエム帝国語はパッションが大事!もっと感情を込めて!」

「アンダメモッ、トォ」

「笑顔で!アンダメモットォッ」

「アンダメモットォッ!」

「アンダメモットォッ」

『アンダメモットォッ!!!』

「よしっ!」
これこそ完璧なエスエム帝国語である……!!

そして教育的指導を終えれば、ヴィーノにお土産の青唐辛子味噌とアップルティージュース瓶を渡し、ヴィーノはお馬さんアップルプルフェエェルッ号を連れて帰って行った。

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