思い出したのが遅すぎて破滅した悪役令息は、王弟殿下にもらわれ何故か溺愛されている。

新入団員御前試合の闇。

こういう新入団員御前試合には、当然と言っていいほどに【テンプレ】と言うものが繰り広げられるわけである。

『さて、ここで事件です！第3隊隊員のアリーシャさん？』
順調にばぶぅタイムを挟みつつ試合が行われていたのだが。突然副隊長がモニター越しにそう告げてきた。

なお、ばぶぅタイムには、罰を受けた騎士が出て以来抗議するものはいなかった。

受けちゃん、女性同士は『だってばぶちゃんのためだもの』で互いに笑顔で『行ってらっしゃ～い』と言い合っていたし、攻め騎士も騎士の礼をして笑顔で見送っていた。

さて、ばぶぅ騒動もありつつ、平和に行われていたところに、事件？今度はどんな事件が……。

そしてモニターの画面が切り替わり、第3隊隊員だと言う女性騎士アリーシャさんがマイクを持ってカメラを誘導する。

『（みなさん！こちらです！）』
囁くように告げたアリーシャさんが示した先には……？

『次の試合、負けろよ。ったく、受けのくせに騎士だなんて生意気なんだ！負けなければお前の家がどうなるか……』
な・ん・だ、あのテンプレダメ騎士はあぁぁぁ～～～～っ！？

そしてその正面で悔しげに目尻に涙をためる受けちゃんっ！！あぁうぅぅっ！！受けちゃん騎士は最近増えてきた受け男子たちの憧れとは言え、いまだにあぁいう攻め男子っているんだぁ～～っ！ムキ～～～～っ！受け男子の敵～～っ！！

そこで、シェルたんが再び手を挙げれば、何処からともなく黒ずくめ集団があぁぁ～～っ！

『キタあぁぁ――――――っ！女の敵！受け男子の敵は、滅びるのだぁ～～っ！！！』
あ、アリーシャさあぁぁぁんっ！？アリーシャさんはアリーシャさんでどんな怨みを持ってるのぉぉぉっ！？いや、受け男子も大変ながら、女性も大変だ。最近は社会進出も当たり前になりつつあるが、ああいう差別や理不尽な圧力もまだ存在する。特に貴族から平民への圧力なんてざらにある。

騎士団は特に、貴族や平民が入り交じる。そして攻め、受け、女性もだ。

そして黒ずくめ集団は華麗に脅した攻め騎士のおちりを剥き、おちりペンペンをしていく。

パシイィィンッ

ペシベシィンッ

『あ゛～～～～～～っ！？』

おちりをペンペンされる攻め騎士を遠目で見ながら、受けちゃんがインタビューに答える。

『あのひと、貴族で……。平民で受けのぼくを脅してきたんです……！ですけど、第6隊のみなさんを見て……ぼくも第6隊に入りたいと思いました！第6隊に入るため、ぼく、頑張ります！！』
ひえぇ。そうしてまた、シェルたん信奉の部下が増えていくのか！？

シェルたんを見上げれば。

「うむ、よい人材を見つけたな」
シェルたんもノリノリやんんんっ！！！

こうして、貴族のダメボンボンは騎士道精神にもとるとして、懲罰ルーム行き……ではなく退団させられた。

ばぶハラはまだ更正のチャンスがあったらしいが、こちらはさすがに脅しだからタチが悪いとなったそうだ。研修中も貴族であることを利用して好き勝手やっていたこともあだになった。

こうして事件はいろいろとあったのだが、御前試合は無事に終了。各隊長たちも有望な新人のスカウトにきゃっきゃしていた。

なお、シェルたんはもちろん先ほどの受けちゃんをスカウトしたらしい。

因みに……あの貴族の攻め騎士だが。彼の家は抗議したものの、手を下す許可を出したのが大公のシェルたんで、王妃のお母さまも現認していたことで、むしろ貴族としての責任を問われることになった。

そんなわけで屋敷に帰って来た俺たち。

「元の姿に戻れたぁ～～」
シェルたんにそろそろ戻るからと言われ、裸になってタオルケットに包まれていたら……本当に戻れた。

時間が経てば戻るやつだったかぁ。試合中はばぶぅルームでおしめ変えられたりしたからなぁ……。外からは見えなくとも内からは見えるから結構恥ずかしかったのだ。

「ユウェルたん、ユウェルたん」
そして俺に服を差し出しながらシェルたんがなんとも言えないわんこアイを向けてくる。

「ん？なしたん？」
パジャマに着替えつつ、わんこシェルたんの頭をなでなで。

「私は重大なことを見落としていたのだ」
「うん？」

「ばぶユウェルたん、めちゃかわよす……でも、とちゅとちゅできない」
あ～たっりまえやあぁぁぁ～～～～っ！！

「今夜は愛し合おう」
つまり、ずっと抱っこしていたものの、寂しかったと。

「ん、いいよ。その代わり、ばぶ化させる時は事前に言うこと」
いきなりばぶにされると困るし。

「……うん！」
こくんと頷いたシェルたんに、その晩はたぁ～っぷりと抱かれたのは、言うまでもない。