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体育祭準備

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「もうすぐ体育祭のシーズンだねぇ」

お昼に俺の一服スペースで弁当を食べながら琢磨が憂鬱そうに言った。

「運動苦手なのか?」
「まぁ、それもあるんだけど、学校内のイベント前は大体生徒会は忙しいから」
「へぇ」
「でも今回のイベントはリンがいるから頑張れるよ!」
「は。俺は何の役にもたたねぇけど」
「リンは居てくれるだけで僕のモチベになるんだよ」
「意味わかんねぇ……お前変わってんなぁ」
「お前じゃないけど!!」
「ああ。琢磨、な?」
「っ! そうだよっ。ちゃんと呼んでよねっ!」
「ところで琢磨、お前庶務は一緒に居なくていいのか?」

庶務とはこの間まで琢磨がずっと一緒に行動していた双子の片割れのことだ。

「……いいんだよ」
「? そうか」

琢磨の顔が暗くなったような気がしたがまぁ、本人がそう言うならいいのだろう。

「リンは何の競技に出るの?」
「あー。ほとんど」
「え!?」
「いや、俺が授業サボってる間に出る競技全部決められててよ。俺への嫌がらせにクラスメートと担任が勝手に……。ああ、考えただけで憂鬱だ」
「そ、そうなんだ! じゃあ僕、いっぱい応援するねっ」
「おう。そうしてくれ」

こいつとは変な縁での繋がりだとは思うが、俺は思い返せばこの学校に来る前から友達がほとんどいなかったから、俺と普通に話してくれるのが何だか楽しいし嬉しいと思う。

なんだかんだ言いつつ体育祭の練習はちゃんと真面目に取り組んだ俺は上位に食い込める自信が出てきた。

競技とは別で応援団の練習もやらされたが、嫌われ者の俺に応援されて誰が喜ぶんだか。

体育祭の数日前になり、役職もちの生徒などは授業中にテントの設営などを行うことになった。
そのような雑用の場に親衛隊が呼ばれないということなどないので、もちろん俺も参加した。
クソ暑くて頭が朦朧とするようだ。

「ゴミ虫。体育祭準備でただでさえめんどくせぇのに、お前の顔なんて見たら余計疲れる。教室に帰れ」

会長が俺を見つけて即座にそう言ってきた。
何ならそのお言葉通り俺は冷房の効いた教室に今すぐ戻りたいんですけど。


「会長さま、お疲れ様ですぅ。僕は会長さまとご一緒できて嬉しいですっ」
「うぜぇ」

はいはい。うぜぇなら話しかけんなカス。

「……は?」

会長は驚いた顔をして俺を見ている。

「どうかされましたか?」
「いや、お前今……」

「会長! この件なんですが!」

会長が何か言おうとしたが横から他の生徒に話しかけられてそちらに対応し始めた。
俺はそんな会長を横目にさっさと次の持ち場に移動した。

はぁ。あちい。
スポドリ飲みてぇ。

ってあれ?
俺、今日飲み物飲んだっけ。

視界が暗くなっていく気が……やべ、倒れる。

だが倒れる寸前誰かが俺の体を支えてくれたのがわかった。
俺はそれが誰なのか確認する余裕もなく目を閉じた。
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