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会長2

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どこまで行くんだろう。
俺は引っ張られて歩きながら息を吐き出した。
抱いてやるとか言っていたが、この会長が俺を抱けるとは到底思えない。

だが。

『お前のことは好きじゃない!』

頭の中で記憶の中の父が母を罵る声が再生された。

『男はなぁ、好きじゃなくても出来んだよ』

母は泣いて嫌がっていたな。

俺も男ではあるが、父のようにはなりたくない。
好きでもない相手とそういうことはするべきじゃない。

まして、お互い嫌いあっているのだから抱く、抱かないの話になる方がおかしいのだ。

空き教室に連れ込まれて両手を押さえられ会長の顔が近づいてきて、キスをされるのかという段階で、俺はやっと動いた。

「っやめろ」

俺が顔をそらしてそう言うと、会長は案外あっさりと引き下がって俺から距離を取った。

「なぜ嫌がる」
「なぜって……こういうのは好きな人とするもの、でしょう? そして会長は僕を好きじゃない」
「ふっ。何を今更。お前は誰彼構わずセックス三昧という噂を聞いたが」

ニヤリと笑いながらそんなことを言ってくる会長が心底うざい。

「会長さまはぁ、噂とかすぐに信じちゃうタイプなんですか~?」
「さぁな。まぁ、だが。その反応を見るにこの噂に関しちゃ嘘だったってことなんだろう」

会長はニヤニヤとしながらそう言った。
まさかその噂の真意を測るためだけにこんなことをしでかしたとは思えないが、会長の満足そうな顔を見るにその可能性を捨てきれなくなった。

まぁ、何にせよ俺を抱こうなどという行動を本気で起こされなくて良かった。
さすがに会長を殴り倒すわけにはいかない。
何せ俺はこいつの親衛隊長なのだから。
そうしてお互い無言の時間が数分あったのち、会長が呟いた。

「最近……なぜ食堂に来ない。前はよく来ていただろう」

はぁ?
意味わからん。
俺はお前が生徒会エリアじゃなく一般エリアで食うから行けねぇんだろうが。
それにこいつ自分の言ったこと忘れてんのか?
『もうお前出ていけ。ゴミ虫がいると不快だ』
そう言っただろうが。

「そうですねぇ。最近はぁ、購買でお弁当を買って外で食べてるんですぅ」
「一人でか」
「いいえ~、書記さまとぉ、庶務さまと食べてますよぉ」
「そうか……もう、食堂へは来ないのか」
「そうですねぇ。もしかしてぇ、会長さまは僕と一緒にご飯食べたいんですかぁ?」

前に聞いた時は『勘違いも甚だしい』と言われたな。

「ああ」

そっぽを向いた会長は俺の聞き間違いじゃなければ肯定の意味の言葉を発した気がする。

「えっとぉ、すみません。僕と一緒にご飯食べたいんですかって聞いたんですよ?」

うまく聞き取れていないくせに返事をしたらしい会長のために俺はもう一度、今度はゆっくりめに聞いてやった。
だが帰ってきた答えは先ほどと寸分変わらず。

「ああ」

だった。

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